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平成29年度税制改正による連結納税制度への影響

記事作成日2018/07/20 最終更新日2018/07/20

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1. 連結納税制度とは

連結納税とは,完全支配関係のある2社以上の内国法人グループ(連結納税グループ)において、グループ内の各法人の所得金額を合算し、グループを一体として法人税を計算する制度です。連結納税の最大のメリットは、税額計算においてグループ各社の所得を通算できるため、子会社の中に所得がマイナスの会社がある場合、グループ全体の税負担額を減らすことが可能です。

2. 連結納税制度のデメリット

連結納税を採用することで子法人に起こり得る主なデメリットは以下の通りです。

(a)連結納税開始または加入時に、子法人が有していた繰越欠損金が切り捨てられる場合があること。
(b)連結納税開始または加入時に、子法人が保有する一定の資産について時価評価が必要な場合があること。

3. 平成29年度税制改正による影響

平成29年度税制改正では次の改正が行われ、連結納税を導入することによる上記のデメリットが軽減されることになりました。

(a)自己創設営業権が時価評価対象資産から除外された

連結納税開始時に時価評価の対象となる資産の詳細について今回は説明を省略しますが、平成29年度税制改正前の制度では、自己創設営業権は無形減価償却資産として連結納税開始時における時価評価の対象とされていました。時価評価に伴う税負担や事務負担が大きく、連結納税のメリットを理解していても導入に踏み切れない大きな要因となっていました。
これが、平成29年度税制改正により,「帳簿価額が1,000万円に満たない資産」が時価評価対象資産から除外されることになりました。自己創設営業権の帳簿価額はゼロなので、結果として自己創設営業権が時価評価対象資産から除外されることになりました。
この改正により、大きな含み益を抱えている土地や有価証券であっても税務上の帳簿価額が1,000万円未満であれば時価評価する必要がなくなったこともあり,連結納税導入のハードルが大きく下がることになった改正といえます。
改正後の制度は、時価評価を行う子法人の事業年度が平成29年10月1日以後に終了する場合に適用されます。

(b)スクイーズアウトにより子法人化された法人への改正

平成29年税制改正前の組織再編税制では、既に株式を一定程度保有し、支配している子法人を100%子法人化する場合でも、現金を対価とする株式交換により100%子法人化した場合には非適格株式交換に該当していました。したがって、その子法人は連結納税開始又は加入に伴い繰越欠損金の切捨てや時価評価課税の対象となっていました。
この制度により、既に連結納税を導入している企業グループでは、繰越欠損金の切捨てや時価評価課税といった税務上のデメリットの大きさから,100%子法人化を断念せざるを得ないケースが多くありました。
これが平成29年度税制改正では、現金を対価とする株式交換であっても、その現金が少数株主に対してのみ交付されるのであれば、その他一定の要件を満たすことで適格株式交換に該当することとされました。そして、この適格株式交換により100%子法人化された法人は、連結納税開始又は加入に伴う繰越欠損金の切捨てや時価評価課税の対象外とされました。
改正後の制度は、平成29年10月1日以後に行われる株式交換等または合併について適用されます。

制度が複雑で、導入が難しいように思える連結納税制度ですが、以上のような改正がされたことにより以前より導入がしやすくなりました。
ただし、連結納税制度は一度導入すると原則として取りやめができないため、導入にあたっては専門家を利用して慎重に検討することが必要です。