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個人事業主が事業承継するために必要な手続きや注意点

記事作成日2017/09/19 最終更新日2023/03/17

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個人事業主が事業承継するために必要な手続きや注意点の説明

個人事業主とは会社などの法人を設立せず、個人で何らかの事業を行っている人のことをいい、自営業と言い換えることもできます。新たに事業を始めたとき、開業後1カ月以内に「個人事業の開業届出書」を所轄税務署長に提出することにより個人事業主になることができます。

では、個人事業主が事業承継しようとする場合、どのように行うことができるのでしょうか。また、個人事業主と
法人では事業承継において何が違うのかについてご紹介します。

個人事業主の事業承継の流れ

個人事業主の事業承継を行う場合も、まず後継者を選ぶことから始めます。一般的には子どもに引き継ぐことが多いですが、必ずしも子どもを選ばなければならないというわけではありません。後継者が決まったら、事業を行っていくための心構えや経営のノウハウ、取引先との関係や従業員との雇用関係などを引き継いでいきます。また、事業用資産も引き継ぎます。

会社の場合は自社株の譲渡によって財産を引き継ぎますが、個人事業には株式はありません。個人事業主の事業用資産には不動産、預貯金、商品、機械設備、売掛金などがあります。これらの資産を、それぞれ「売買」、「贈与」、「相続」によって引き継ぐことになります。

売買の場合は、基本的に譲渡した側に所得税を納める義務が生じます。事業用資産を子どもに贈与する場合は、年間110万円を超えないようにすれば贈与税がかかりませんし、基礎控除額が大きい相続によって資産を承継することもできます。相続の場合は、経営者が亡くなった後4カ月以内に、後継者が前経営者の所得税の確定申告を行う必要があります。

どの方法で引き継ぐかによって税金が大きく違ってくるので税理士など専門家に相談しながら進めていくと良いでしょう。

個人事業主の事業承継に必要な手続き

個人事業主の事業承継の税務上の手続きは比較的簡単に行うことができます。事業を承継する側が廃業届を提出し、後継者が開業届を提出することで手続きは完了します。個人事業の納税義務は「個人」に課せられるため、双方が確定申告をする必要があります。

手続きに必要な書類として、事業を承継する側は「個人事業の廃業届出書」を廃業から1カ月以内に所轄税務署長に提出しなければなりません。青色申告をしていた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」も提出します。

さらに、消費税の課税事業者であれば消費税の「事業廃止届出書」をすみやかに提出する必要もあります。それ以外に個人で取得していた許認可は引き継ぐことができないので、行政機関に「廃業届」を提出します。

後継者

一方後継者は「個人事業の開業届出書」を所轄税務署長に提出しなければなりません。開業届を出すタイミングは、事業を承継する側が廃業届を提出する前でも後でも問題ありません。また必要に応じて、「所得税の青色申告承認申請書」や「減価償却資産の償却方法の届出書」も所轄税務署長に提出します。

なお、消費税に関しては、新たに開業した場合は原則として納税義務が免除されるので手続きは必要ありませんが、売上げにかかる消費税額より仕入れにかかる消費税額の方が多い場合などは、免税事業者であっても課税事業者になることを選択することで消費税の還付を受けることができます。その場合は「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。

なお事業に必要な許認可は原則引き継ぐことができないため、新たに取得しなければなりません。許認可はその種類によって必要な書類や手続きにかかる期間が違うため、前もって所轄の行政機関に確認しておくことが大切です。

事業承継における法人と個人事業主の違い

法人と個人事業主では事業承継においていくつかの違いがあります。まず税制に関して、法人の場合は事業承継によって会社の代表者が代わっても納税義務者は法人のため変わりはありません。しかし、個人事業主の場合は、個人が納税義務者になります。そのため、事業承継によって納税義務者は後継者個人に変更されます。

また従業員を雇っている場合の雇用契約にも違いがあります。法人の場合は、雇用関係をそのまま維持することができますが、個人事業の場合はいったん雇用契約を解除して、新たに後継者と雇用契約を結びなおさなければなりません。

同様に取引先との契約も個人事業主の場合は、後継者の名義に変更する必要がありますし、事務所や店舗などの賃貸借契約も事業を承継する人の名義から、後継者の名義へと変更しなければなりません。

このように法人の場合は、権利や義務、財産は会社に帰属しているので会社の代表が交代するだけですが、個人事業主の場合は、これらはすべて個人に帰属しているので個別に手続きが必要になるわけです。

個人事業主が事業承継する場合、事業を承継する側が「廃業届」を、後継者が「開業届」を提出することで税制上の手続きはほぼ完了します。しかし、事業を続けていくためにはいくためには契約を結びなおすなど、いろいろな手続きをしなければなりません。

手続きそのものは個人で行うこともできますが、行っている事業の状況によって提出書類が異なったり、税制面での知識が必要だったりします。専門家に相談しながら計画的に事業承継の準備を進めていくようにしましょう。

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監修 TOMAコンサルタンツグループ コーポレートアドバイザリー部

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