事業承継が進まないまま経営者がどんどん高齢化していけば、最悪の場合、後継者が育つ前に経営者に万が一のことが起きるという事態も起こり得ます。
今回は、事業承継を円滑に進めるために有効な、事業承継計画書の作成手順や作成のポイントについてご紹介します。
事業承継計画書の必要性と作成の目的
そもそも、事業承継計画書はなぜ必要なのでしょうか。
具体的な必要性や目的を見ていきましょう。
後継者と経営者の意識を合わせる
経営者は会社の状態や経営者としての仕事内容を把握しているものですが、後継者も同じレベルで経営者としての意識を持っているかというと、最初はそうではないケースの方が多いかもしれません。
また、経営者が満足できるレベルに後継者がおらず、事業承継に向けて後継者を教育する必要があることも少なくありません。
経営者と後継者の意識を合わせ、事業承継というゴールに向けてお互いがタッグを組んで進んで行く、そのためにも事業承継計画書は必要です。
いつ何をするべきかを明確にする
事業承継計画書には、会社の経営計画に加え、事業承継のスケジュールを書き込みます。
これによって「誰が」「いつ」「何をするべきか」「その時会社の状況はどうなっているべきなのか」ということが明確になります。
経営者は多忙なため、計画書がなければなかなか事業承継が具体的に進んで行きません。
いつ何をするべきなのかを明確にするためにも、事業承継計画書は必要です。
事業承継計画を作成する流れや作成時のポイント
では、事業承継計画書はどのように作成すればいいのでしょうか。
また、作成時に注意しておきたいポイントはどの点でしょうか。
事業承継計画書作成の流れ
事業承継計画書を作成するためには、まず現状を客観的に把握することが重要です。
そのため、まずは売上高や経常利益、どの事業がメインになっているのか、借入金の返済計画に加え、経営者や後継者の状況など会社の情報を洗い出す作業を行います。
次に、事業承継に関わる課題を洗い出し、どのように対策を立てて行くのかを整理します。
ここで経営方針や目標についても明確になってきますので、より具体的なスケジュールにすべきことを落とし込んでいきます。
事業承継をいつまでに行うのか、そのためには後継者をどのように教育していけばいいかなどのスケジュールを立て、計画書を作成するというのが一般的な流れです。
作成のポイント
事業承継計画書を作成するポイントは、「現状を客観的に分析する」「経営方針や目標を具体的に設定する」「後継者に足りないスキルや事業承継のために必要なスキルを明確にする」ことです。
いわば、現在地と目的地をしっかりと明確にすることです。
この作業ができて初めて、現実的な事業承継計画書を作ることができます。
事業承継計画書に入れ込む項目
事業承継計画書には、具体的にどのようなデータを入れ込む必要があるのでしょうか?
経営者と後継者の行動計画
例えば、事業承継計画を開始して何年目に外部の取引先に後継者の紹介を行うのか、社内に発表するのかなど、現在会社を経営している経営者が何年目にどんな行動をするのかについての項目は必要です。
事業承継の具体的な動きは、経営者が行うことが多いためです。
後継者候補に関する情報
同様に、後継者の行動に関する項目も必要となります。
事業承継が無事に完了するまでには、経営者にふさわしい人材となれるよう教育がされることが一般的ですが、この教育計画も事業承継計画書に入れ込んでおく必要があります。
売上高や経常利益、借入金残高
事業承継は、会社にダメージを与えずに行いたいものです。
そのため、売上高や経常利益の目標値もしっかり計画書に入れ込み、随時確認と修正をしながら進めて行く必要があります。
借入金の返済計画についても同様です。
事業内容と今後の経営計画
事業承継を進めて行く間にも、会社は発展させていかなければなりません。
そのため、事業承継計画書には会社の事業内容と中長期の経営計画を入れ込む必要があります。
事業承継計画書を見れば、会社の状況がすぐにわかるようにしておくことが必要です。
事業承継を円滑に進め、現在地と目的地を明確にするためには、事業承継計画書が必要です。
事業承継計画書を見れば事業承継と会社の経営計画が一目でわかるようにしておくことで、より事業承継がスムーズに進んで行くことでしょう。