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「事業承継士」の役割と事業承継時にもたらす効果とは

記事作成日2017/09/12 最終更新日2021/01/22

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帝国データバンクの調査によると、全国の社長の平均年齢は年々高齢化しており、2017年には59.3歳となりました。特に世代交代が急務である団塊世代(1947~49年生まれ)の社長の割合は11.3%となり、事業承継が思うように進んでいない現状を表しています。(帝国データバンク 「全国社長分析2017」より)

少子高齢化の解決や、高度成長期のような伸びを期待することが難しい現代、事業承継が進まない問題は、もはや一個人や一企業の問題ではなく社会問題であり、中小企業庁でも注力している課題です。

今回は、そんな事業承継問題を解決するスペシャリスト「事業承継士」についてご紹介します。

事業承継士とは

事業承継士は、急増・社会問題化した中小企業の事業承継という課題を、総合的に解決するために、一般社団法人事業承継協会が認定している資格です。事業承継協会は中小企業診断士数名が設立した法人で、事業承継問題に取り組んできた経験や構築してきたノウハウを全国、そして次世代にも広めることで、価値ある事業を継続させていくことを目的としています。つまり、事業承継士は、事業承継の経験・ノウハウを広める手段として誕生しました。

2015年にスタートしたばかりの資格ですが、事業承継ノウハウを総括的に身に付けられる唯一の資格として、中小企業診断士や行政書士、コンサルタントなどが取得しています。

事業承継士の取得方法と対象者

事業承継士となるには、5日間の講座の受講後に、認定試験に合格し、事業承継協会への入会(審査有り)が必要です。「たった5日間で取得できるのなら是非」と思うかもしれませんね。ただし、事業承継士は、誰でも取得できるものではありません。

『事業承継協会の認めた国家資格保有者か、それ同等の知識と能力があると判断される方(※事業承継協会HPより抜粋)』を対象としており、現時点(2017年8月)で対象者として紹介されているのは、中小企業診断士、税理士、公認会計士、弁護士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、土地家屋調査士、一級建築士、不動産鑑定士、ファイナンシャル・プランニング技能士等です。つまり「事業承継士の知識を活かせる場所を持つ方」を対象としているとも言えるでしょう。

他の資格と何が違うのか

事業承継には様々な専門家の協力が必要となります。その専門家が持つ資格と、事業承継士とは何が違うのか理解するために、事業承継士のメリットを見てみましょう。

・メリット1:事業承継の実践的な学習事業承継問題で発生する、様々な課題への解決方法を学ぶ講座となっており、計画書の作成方法や関連税法はもちろん、事業承継士として信頼される方法、クロージングのタイミング、社長交代の演出方法等、営業手法の習得も盛り込まれています。

・メリット2:資料とサポートの充実事業承継協会は、多くの事業承継問題を解決してきた中小企業診断士が立ち上げた協会のため、実際に使用された資料・書式・提案書・診断書等が協会HPからダウンロードでき、自由に使用することが可能です。熟練者が苦労して作り上げた書式ですから、使用できるメリットは大きいでしょう。また、取得後のサポートも充実しています。購読誌により最新情報の入手ができますし、単位取得等を条件とした資格更新制を採用しているため、資格取得時の知識・ノウハウのまま錆びつくことがありません。

・メリット3:繋がりを作ることができる取得を目指して講座を受講されるのは、様々な分野の専門家ですから、各方面に繋がりを持つことができます。事業承継には様々な専門知識や手続きを要しますから、この講座を通して構築したネットワークは強力です。

・メリット4:事業承継に特化した唯一の資格最大のメリットは、やはり事業承継に特化した資格であることでしょう。今まで、相続や節税、手続きなど、各分野の専門家はいても、事業承継のプロは存在しませんでした。事業承継士は、これら専門家をコーディネートする立場にある、事業承継に特化した唯一の資格です。

以上のメリットを見ると、事業承継士は、事業承継に悩む経営者や関係者にとって、「何から手をつけるべきか」という最初の関門から相談できる、事業承継の専門家であることが、他の資格との違いと言えるのではないでしょうか。

更新制の資格であることのメリット

他資格との違いでも述べましたが、事業承継士は更新制の資格です。下表を見るだけでも、更新にはかなり厳しい条件をクリアする必要があるとわかります。

事業承継士資格更新には、3年間で以下条件より30単位の取得が必要

事業承継士とは。事業承継に果たす役割とは

事業承継協会HPより抜粋)

つまり、「一度取得してしまえば安心だ」「ちょっと講習に出ておけば更新できる」というような甘いものではなく、事業承継士を名乗る以上は、それ相応の継続した努力を要するのです。

経営者・関係者にとって、事情承継は、自分や親族のみならず、従業員や取引先の生活も考えて動かなければならない深刻な課題ですから、事業承継士が上記のような厳しい更新制であることは、頼もしいですね。2016年の休廃業・解散件数は29,583件で、過去最多となりました。(中小企業白書要約より)

事業承継の専門家と出会えていれば、現在も存続することのできた会社は多いはずです。まだスタートして間もない事業承継士ですが、今後の活躍に大きな期待が持てる、事業承継における唯一の資格です。事業承継に悩む可能性があれば、「事業承継士に相談する」という方法を、選択肢に加えておくと良いでしょう。