「事業承継ローン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。これは、「事業承継ローン」だけでなく、「事業承継・集約・活性化支援資金(企業活力強化貸付)」「事業承継応援ローン」「事業承継ローン・相続対策サポートローン」などのように呼ばれることもあります。
ただここでは、「事業承継ローン」として一括してご紹介していきましょう。事業承継ローンは、簡単に言えば、「事業を引き継ぐときに必要なお金を、銀行などから借りること」となります。
事業承継ローンは、なぜ増えているのか
事業承継ローンが注目されているのには、大きな理由があります。
平成26年3月に中小企業庁が公表した「事業承継ローンに関する現状と課題について」によれば、中小企業の64%が「事業を人に引き継がせたい」と答えており、かつそのうちの約70%ほどが「トラブルになりそうなことがある」と回答しています。そして、そのトラブルの具体的な内容として上位を占めるのが、「後継者が、資金のことで悩んでいる」という問題です。
事業承継を行う際は、現経営者が会社の借入金の連帯保証人になっている場合、後継者がそれを引き継ぐ必要があります。また、後継者が自社株を買い取ったり、事業用資産を買い取ったりしなければなりません。
その悩みを解決するための手段の一つが、「事業承継ローン」です。(中小企業庁「事業承継ローンに関する現状と課題について」)
事業承継ローンの使いみちは?
事業承継ローンの概要はすでに述べた通りですが、もう少し詳しく見ていきましょう。これは、「自社株を買い取るなど、事業を引き継ぐ際に必要となる資金を貸し付ける制度」を言います。つまり、これをうまく利用することによって、上で挙げた問題点をうまくクリアしていくことが可能になることがあるのです。また、事業承継の際には、株式や事業用資産に課税される相続税の納税資金なども必要となります。
これらの事業承継時に必要となる資金調達のために、事業承継ローンは有効に活用できます。もちろん、ローンも「借金」ではあります。そのため、いつかは返さなければなりません。しかし、「今、すぐに」お金が必要となる事業承継のタイミングでは、非常に強い味方になります。
事業承継ローンには、いくつかのタイプがあります。金融機関が行っているものと、政府が関わっているものが中心と言えるでしょう。銀行の場合、「担保や保証人の必要がない」「最大で5,000万円までの融資が可能」「10年間にわたって返してくれればよい」としているところもあります。
政府系ローン制度とは?
さて、もう一つ、政府系ローンについて見ていきましょう。
日本政策金融公庫が実施しているものが有名です。
これは、非常に細かい制約がある(単純に事業を承継するだけでなく新しい試みを5年以内に行うことが必要である、後継者と現経営者がともに事業承継を望み計画している、など)ものの、貸付金額がかなり大きくなるという特徴があります。たとえば、国民生活事業(小規模なものや、新しい会社を立ち上げるもの)ならば7,200万円、中小企業の場合は7億2,000万円が融資限度額となっています。ちなみに、「設備資金として使ったものならば20年以内に、運転資金として使ったものならば7年以内に返すこと」という決まりが設けられています。
詳しい数字や、そもそも借り入れることができるのかなどについては、個々の状況によって異なります。また、事業承継ローンを利用することが、必ずしも推奨されるケースばかりではありません。
しかしそれでも、「後継者も現経営者にもやる気があり、かつ周りの従業員や取引先もそれを望んでいる」という状況で、「資金繰りがうまくいかないから、事業承継ができなくて困っている」という立場の人にとっては、非常に強い味方となることは確かです。