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個人事業主が事業承継する時の方法と注意点

記事作成日2017/09/19 最終更新日2022/03/14

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個人事業の承継は、法人と比べると大変です。その理由は「権利・義務・財産の全てが事業主(経営者)個人のものである」ということです。つまり個人事業の承継には、権利・義務・財産の1つ1つについて、それを引き継ぐ手続きが必要となります。

個人事業主が事業承継するときの流れ

29 事業承継で役員退職金を活用するには

個人事業主が事業承継をする場合、「現経営者の廃業」と「後継者の開業」をセットで行う必要があります。現経営者の廃業では、主に「個人事業の廃業届出書」と「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の2つの書類の提出が必要となります。個人事業の廃業届出書は税務署長へ、廃業日より1カ月以内に提出する必要がありますので、忘れずに提出するようにしてください。

この他、消費税の支払いをしていた場合、簡易課税制度を利用していた場合は、それぞれ「事業廃止届出書」「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出します。

後継者の開業については、「個人事業の開業届出書」を、税務署長へ提出してください。所轄税務署長へ、開業より1カ月以内に提出する必要がありますので、忘れずに提出してください。また、確定申告で青色申告を利用する場合には、「青色申告承認申請書」を提出します。こちらは開業より2カ月以内の提出で問題ありませんが、開業届出書と同時に提出すれば二度手間が防げます。

また、取引先や従業員との契約も、改めて後継者が結ぶことになります。具体的には、取引先との(後継者への)契約者変更、従業員との雇用契約締結などを行います。さらに、事業承継と同時である必要はありませんが、後継者への財産の承継もしていくことになります。

個人事業主が承継する財産とは

個人事業主の場合、財産の全てが現経営者のものとなります。具体的な財産としては、「事業用動産」「事業用不動産」「その他(生活用の)資産」の3つに大別できます。

例えば、事業用動産の承継においては「実質価格の算定」が行われます。実質価格とは、事業用資産から事業用負債を引いた金額のことです。実質価格が110万円を超えなければ、生前贈与でも贈与税はかかりません。実際に、親子間での事業承継の場合、多くは贈与による無償提供が一般的です。

相続争いを避けるための対策

個人事業の相続で大きなトラブルが起きるイメージは無いかもしれませんが、事業の引き継ぎに第三者が関わる場合、親族との間に争いが起きる可能性もあります。中でも不動産は、地代などをめぐる争いに発展する可能性もあるため、関連する契約書をきちんと作成しておくことが、相続争いを避けるためには必須と言えるでしょう。

具体的には、贈与契約書や売買契約書をきちんと作成するようにしてください。口約束などで済ませると、将来意見が対立したときに平行線をたどることとなり、双方が納得できる解決が難しくなる可能性もあるからです。

将来的なトラブルを避けるという意味では、事業承継のタイミングで「承継する第三者に不動産を買い取ってもらう」という方法もあります。いずれにしても、当事者間で事前に話し合う機会を設けることが大切です。

個人事業主の事業承継における節税対策

個人事業の承継における「財産の贈与」では、税金の問題が出てきます。事業用財産が高額の場合、1度に全てを贈与する方法はおすすめできません。贈与においては贈与税が課税されますが、年間110万円までは基礎控除が可能です。なお、事業承継と事業用財産の贈与は同時でなくても構いません。これを利用して、段階的な贈与を上手に行うことが節税対策となります。

個人事業の事業承継には、贈与税・相続税などが関係します。事業用財産の実質価格の算定などをはじめ、迷うことも多いかと思いますので、必要に応じて税理士などに相談しながら進めましょう。