事業承継を行うにあたっては、様々な理由で資金調達が必要な場合が多くあります。しかし、後継者個人の力で頑張っても調達しきれない場合は、各種融資・保証制度を利用することが必要です。
今回は、事業承継時に必要となる資金の種類や利用できる各種融資・保証制度をご紹介していきます。
目次
■事業継承時に必要となる資金
では、実際に事業承継時に必要となる資金にはどういったものがあるのでしょうか。親族内承継を行う場合と、親族外承継を行う場合の2種類に分けて、それぞれどういった資金が必要となるのか見ていきます。
◇親族内承継の場合
親族内承継の場合、後継者や会社には、以下の3種類の資金が必要となります。
・後継者に必要な資金
相続等で分散した自社株や事業用資産を買い取る資金
相続税や贈与税の納税資金(相続や贈与によって自社株や事業用資産を取得した場合)
・会社に必要な資金
後継者・他の相続人等から自社株や事業用資産を買い取る資金
◇親族外承継の場合
親族外承継の場合、後継者や会社はケース別に以下の資金が必要となります。
・経営陣や従業員が買い取る場合(MBO・EBO)
会社の経営陣・従業員が後継者となり、株式や事業を買い取ることで事業承継を行う場合です。後継者が直接買い取る方法と後継者が設立した会社が買い取る方法の2つがあり、その買い取りのために資金が必要となります。
・社外の個人や会社が買い取る場合
社外の第三者が株式や事業を買い取ることで事業承継を行う場合です。こちらもその買い取りのための資金が必要となります。
■事業承継時に必要となる資金の3つの調達方法
事業承継時には多額の資金が必要であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。そんな多額の資金を調達するための方法についてご紹介していきます。
◇政府系金融機関からの融資
日本政策金融公庫・沖縄振興開発金融公庫からの融資を受ける方法です。事業承継時の資金調達を、低利融資制度により支援してもらうことができます。
【融資が受けられる場合】
a) 会社又は個人事業主が、後継者不在などにより事業継続が困難となっている会社から、事業や株式の譲渡などにより事業を承継する場合。
b) 会社が株主から自社株式や事業用資産を買い取る場合。
c) 後継者である個人事業主が、事業用資産を買い取る場合。
d) 経営承継円滑化法に基づく認定※を受けた会社の代表者個人が、自社株式や事業用資産の買い取りや、相続税や贈与税の納税などを行う場合。
(中小企業庁「事業承継における融資・保証制度」より引用 http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/pamphlet/2012/download/1003Shoukei-4.pdf)
【融資の条件〈株式会社日本政策金融公庫(中小企業事業)の場合〉】
・融資限度額:7億2千万円(うち運転資金4億8千万円)
・融資利率:通常 1.21%の基準利率が適用されるところ、0.81%の特別利率を適用。(融資期間 5 年の場合。平成 29 年 4月現在)
ただし、融資を受ける際には各都道府県の担当課に申請書を提出し、都道府県知事の認定を受ける必要があります。
◇信用保証の活用
会社・個人事業主が事業承継に関する資金を金融機関から借り入れる場合、経営承継円滑化法に基づく認定を得たうえで、信用保証協会の通常の保証枠とは異なる「別枠」を利用する方法です。
・通常保障:通常2億円→別枠保証4億円
・無担保保険:通常8,000万円→別枠保証1億6,000万円
・特別小口保険:通常1,250万円→別枠保証2,500万円
このように、通常の保証枠よりも大きな額の借り入れができることとなっています。
こちらも融資を受ける際には各都道府県の担当課に申請書を提出し、都道府県知事の認定を受ける必要があります。
◇事業承継・集約・活性化支援資金の活用
日本政策金融公庫が提供している「事業承継・集約・活性化支援資金」を利用する方法です。利率も低く利用しやすい融資ですが、適用される利率や返済期間は日本政策金融公庫の審査により決定されます。
利用する場合は、事前に日本政策金融公庫に確認してみましょう。
・融資限度額:7億2,000万円(うち運転資金は4億8,000万円まで)
・融資利率:個別の審査で決定(ほとんどの場合上限3%)
・返済期間:設備資金の場合20年以内、運転資金の場合7年以内(ともに2年以内の据置期間あり)
■まとめ
事業承継時に必要となる資金はかなり多額ですが、各種融資・保証制度をうまく使えば調達することは可能です。ただし、申請や審査が必要な場合もありますので、早めに準備を始めておきましょう。
ご自身の状況に合わせた各種融資・保証制度を利用し、無理のない資金調達を実現することが重要です。