事業承継をきっかけにさらに会社を発展させたいとお考えの方も多いことでしょう。
しかし、事業承継時には株式取得の資金や税金などが発生するため、資金を支出して新たな事業に投資することに不安に感じることもあります。
事業承継の際に利用できる補助金や助成金があれば、新たな取り組みを始めやすくなることでしょう。
ここでは、「事業承継補助金」についての概要や申請手続きの方法についてご紹介します。
事業承継補助金の目的とは
事業承継補助金は、経済産業省中小企業庁が主体となり、「創業・事業承継補助金事務局」によって運営されています。年度ごとに公募が行われ、審査を経て補助金の交付がなされます。事業承継補助金は、事業承継をきっかけとして、経営の革新や事業転換など新たな取り組みを行う中小企業に対して、必要な経費の一部を補助するものです。
新たな取り組みによって、雇用を生み出したり、国の経済を活性化させたりする目的があります。つまり補助金を受給する中小企業は、地域社会に貢献することが求められています。また、事業承継補助金は、中小企業に加え個人事業主も申請することができます。
ただし、先代経営者から事業を引き継いだとみなされる場合は、「事業承継」とみなされますが、状況によっては「事業承継」ではなく「創業」とみなされ補助金の対象にならない可能性がありますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
事業承継補助金申請の要件と、交付額の上限について
事業承継補助金の申請をする場合は、いくつかの要件すべてを満たしていなければなりません。まず、会社であるか個人事業主であるかを問わず、事業承継を行う者である必要があります。また、地域経済に貢献していることも求められます。
貢献の度合いを測る要素として、地域の雇用に貢献しているか、所在の地域や近隣地域からの仕入れが多いか、特産品・観光・スポーツなど地域の強みとなる活動に取り組んでいるかなどが考慮されます。
さらに、後継者が経営に関する職務経験を有しているか、同業種に関する知識を有しているかなど、後継者の経歴や能力も要件に含まれています。
この他にも法令を遵守していることや、暴力団など反社会的な勢力との関係がないことも求められます。
補助金には上限が定められていますが、平成29年度の事業継承補助金制度では、事業承継をきっかけとして、従来とは異なる製品を取り扱ったり、出店したりするなど経営革新に取り組む場合の補助金の上限は200万円です。
事業所の廃止・既存事業の廃止・集約を伴う場合は、その費用として300万円を上限に上乗せされるため、補助金の合計は500万円が上限となります。
いずれの場合も補助率は経費の3分の2までとなっています。(平成29年度 事業継承補助金)
事業承継補助金申請の手続き方法とは
事業承継補助金を申請しようとする場合、まず経営革新など新たな取り組みやその事業計画について認定経営革新等支援機関に相談することが必要です。認定経営革新等支援機関は、相談を受けた事業の新規性や実現の可能性、収益性などを確認します。そして事業者は、発行された確認書や他の応募書類を添えて補助金事務局に提出します。
その後、事務局および地域審査会での審査に通過すると採択通知が届きます。それから採択者用の書類を提出すると再び事務局で交付審査が行われ、交付決定となれば補助事業を開始する流れとなります。
さらに補助金を受け取るためには、事業を完了し実績報告書を事務局に提出しなければなりません。そして交付額が確定した後に精算払いという形で支払われます。
実績報告書の提出から補助金の交付までに2~3カ月程度かかります。
このように補助金を受け取るまでには、いくつもの過程があります。
その都度必要になる書類は事務局のウェブサイトからダウンロードすることができます。
事業承継をきっかけにして、新たな事業に取り組むことで地域の経済に貢献することができます。事業承継補助金制度を活用することで、費用の負担を軽くすることができるでしょう。申請には細かく要件が定められていたり、いくつもの書類を提出したりしなければなりません。しかし、こうした申請の過程で、収益性や継続性など事業計画をしっかりと立てることにもつながります。
事業承継を契機とし、事業の発展に加え地域への貢献も視野に入れた経営戦略を立てていくと良いでしょう。