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事業承継における第三者割当増資の活用について

記事作成日2020/01/29 最終更新日2021/01/22

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第三者割当増資はさまざまな場面で活用されています。第三者割当増資そのものの特徴に加え、事業承継においてはどのようなメリットがあるのかをご紹介します。

■第三者割当増資とは

第三者割当増資とは、既存の株主以外の第三者に対して新株を発行し、それによって会社の資産を増やす方法です。

第三者の多くは取引先や提携先であることが多く、取引先等との関係性安定化のために第三者割当増資が行われることもあります。

■第三者割当増資のメリット・デメリット

第三者割当増資には多くのメリットがありますが、合わせてデメリットもあるため、どちらもおさえておくことが重要です。

◇メリット

・返済義務がない

第三者割当増資は同じ資金調達でも借り入れではないため、将来にわたる返済義務がありません。それに伴って、借り入れ利息の負担なども発生しないため、資金を有効に活用することができます。

・自己資本を増やせる

借り入れをした場合は負債が増えることになりますが、第三者割当増資によって株式を発行した場合、会社の資本が増えます。自己資本が増えることで、会社の対外的な信頼も増します。この点も第三者割当増資のメリットといえるでしょう。

◇デメリット

・株主の持ち分割合が変わることで増税の可能性

新株を第三者に発行することによって、既存の株主の持ち分割合が変化します。既存の株主が保有する株価よりも低い株価で第三者割当を行った場合、既存株主から第三者が贈与を受けたとして、個人の場合は贈与税が、法人の場合は法人税が課税される可能性があります。

・経営者の影響力が希薄になる可能性

非上場会社の多くは、経営者が多くの株式を保有しています。中には100%株主となっている会社もありますが、第三者割当増資を行うことにより、経営者の持ち分割合が減ることになります。その結果、経営に関する経営者の影響力が下がることが考えられます。

また、株主総会の特別決議を単独で成立させるなどの権利は議決権保有割合によって定められていますが、経営者の持ち分割合が減ることで、これらの権利行使が難しくなることも考えられます。

■事業承継における第三者割当増資のメリット

事業承継においても、第三者割当増資はメリットが大きい方法です。

◇自社株の評価を下げる

事業承継の際には、現経営者が保有する株式を後継者に贈与、もしくは相続させる方法がとられます。ここで現経営者の保有する自社株の数を減らせば、それに伴って自社株の評価も下がり、結果的に贈与税や相続税も引き下がります。

このときに活用できるのが、第三者割当増資です。第三者割当増資では会社側が新株を発行する対象者を選ぶことができるため、全く関係のない第三者が株主として経営に関わることもありません。

◇M&Aの手法の一つでもある

第三者割当増資は、M&Aでも広く使われている手法です。売り手が買い手の会社に対して新株発行を行い、それによって売り手側は借り入れを行わずに買い手側から直接資金を調達ことができます。金融機関などからの借入金も増やさずに自己資本を大きくできるうえ、買い手側も株主として経営に参画することができます。

◇中小企業投資育成会社を活用することも視野に入れたい

事業承継における第三者割当増資でおさえておきたいのが、中小企業投資育成会社の存在です。中小企業投資育成会社は、中小企業投資育成会社法によって設立されました。中小企業等の第三者割当増資に関する新株発行の引受先として活用されています。

大きな特徴は、株主となっても経営に干渉しない点です。中小企業投資育成会社の株式発行価格は所定の方法で算定しますが、株式の額面金額に近い価格になることが多いため、全体の株式評価額が下がる効果が期待できます。

■まとめ

第三者割当増資は借り入れをすることなく自己資本を増やすことができます。

それに加えて、自社株の評価を下げることができる点も、事業承継においてメリットといえるでしょう。