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事業承継における役員借入金のデメリット

記事作成日2020/01/29 最終更新日2021/01/22

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役員からの借入金である「役員借入金」。資金が十分でない中小企業にとっては便利な制度ですが、事業承継の際にはデメリットが発生します。 今回は、役員借入金の定義や事業承継におけるデメリットなどを具体的にご紹介していきます。

■役員借入金とは「役員が会社に貸したお金」

 役員借入金とは、役員から会社に貸し付けた資金のことを指します。資金が少ない中小企業が、一時的に資本を立て替える場合や開業資金にあてる場合に使われます。

金融機関の融資と違い、貸付を行う役員が了承すれば無利息・長めの返済期限を設定できることがメリットです。開業したてや資金繰りの厳しい会社にとっては、とても大きなメリットのある制度であるといえるでしょう。

ただし、利息を設定したり会社から役員へ担保を提供したりする場合は、取締役会の承認が必要となります。これは、高利息を設定されたり担保を失ったりするリスクに対して、事前に会社運営者全員が同意しておく必要があるためです。また、役員借入金を利用しすぎると負債が資本より大きくなり、債務超過になってしまう恐れもあります。そうすると自己資本比率が下がり金融機関からの印象も悪くなってしまうため、早めに返済することを心がけましょう。

このように、会社の運営に際しとても便利な役員借入金ですが、これらのデメリットに加え事業承継を行う際には、また別のデメリットが発生します。以下でそのデメリットについて見ていきましょう。

 ■事業承継における役員借入金のデメリットは「相続税の対象になる」こと

 役員借入金は相続財産として評価されるため、事業承継の際には相続税の対象となります。そのため、役員借入金を残したまま事業承継を行うと、後継者に相続税の負担をかけてしまうことになります。なお、万が一借り入れ先の役員が死亡した場合にも、役員借入金は相続財産として相続税の対象となるため、借りている額が大きいほど高い相続税を払うことになります。

いずれにせよ、せっかく無利息で役員借入金を借りられても、事業承継の際には相続税がかかってしまうため、早めに返済することが大切です。

では、具体的にどのような方法で削減すればよいのか、以下で見ていきましょう。

■役員借入金を削減する4つの方法

 役員借入金を削減する方法は4つあります。以下で具体的に見ていきましょう。

 ◇DES(デット・エクイティ・スワップ)

Debt Equity Swap(債務資本交換)の略で、債務(役員借入金)を資本金に振り替える方法です。

例えば、借り入れ先の役員が債務と引き換えに自社株を手に入れる等の方法があり、会社にも役員にもメリットがあります。また、会社の純資産が増加し負債が減少するため、財務体質の改善も図ることができます。

ただし、やりすぎて資本金が1億円を超えると、中小企業に対する優遇税制策が受けられなくなる・外形標準課税が課せられる・法人住民税の均等割負担が増えるなどのデメリットが発生する恐れがあるので、行う際には注意が必要です。

 ◇債務免除

役員が会社に対する債務(ここでは役員借入金の返済)を免除する方法です。

免除された額に対して法人税・贈与税等が課税される場合がありますが、会社が赤字または繰越欠損金ありの場合は非課税で免除されます。

◇暦年贈与

役員が債務分を後継者に贈与する方法です。

債務分が110万円以内であれば贈与税の基礎控除額内におさまるため、贈与税はかかりません。

 ◇役員の給与を減額し、その分で借入金を返済する

役員の給与を減額した分、借入金返済をする方法です。

一見役員にメリットがないように見えますが、給与が減る分所得税・住民税等の各種税金が減額されます。一方、会社側その分利益が増えることとなります。

 まとめ

 資金調達法として非常に大きなメリットなある役員借入金ですが、事業承継の際には相続税がかかります。その事態を避けるためには、早めの返済やDESの利用など、しかるべき対策が必要です。

なお、特にDESは利用方法によって別のデメリットが発生する場合もあるため、いずれも実行前に専門家にしっかり相談しましょう。