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事業承継で想定される労務リスクとは

記事作成日2020/01/29 最終更新日2021/01/22

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会社を設立するときだけではなく、事業承継の際にも労務管理体制に気を配る必要があります。しかし、現経営者は後継者への引き継ぎに時間を割かなければならず、労働環境や労働条件の見直しが後回しになってしまいがちです。 優先すべきことがたくさんあるなか、これまでの労務管理体制で本当によいのでしょうか?ここでは、事業承継で想定される労務リスクについてみていきます。

■事業承継で想定される労務リスク

まずは、事業承継以外でも起こり得る労務リスクをご紹介します。

・残業代請求をされる

・労働時間管理について指摘される

・解雇や懲戒処分関連で訴訟される

・競合他社に情報が漏れる

・セクハラ・パワハラ問題が起きる

・メンタルヘルス問題が起きる

・労働基準監督署の調査が入る

これらは会社で働くと生じる、「人」と「人」とのトラブルがきっかけとなり、会社経営に大きなダメージを与えてしまうものです。

事業承継で想定される労務リスクも、「現経営者」と「後継者」、あるいは「役員」「従業員」「金融機関」などとの対立によって生じるものが目立ちます。

・就業規則が存在していなかった

・雇用契約書に不備があった

・現経営者が勝手に賃金を決めていた

・コスト削減のために請負契約をしていた

・未払い残業代、不当解雇が表面化した

・残業代の問題が解決していない

・あいまいな雇用契約により、所得税及び消費税の負担が生じていた

・借入金などの返済に充てられる確実な資金がない

・過大な役員退職金として、個人も法人も課税されることとなった

・退職金規程がないことが発覚した

・退職後の給与と年金受給の調整を行わずに、減額された

数々のトラブルを引き起こすリスクがあるのに、相談できる社会保険労務士や労務コンサルティングがいない会社が多く存在します。事業承継時に問題が発覚してから対応するのではなく、事前にリスク回避を行いましょう。

■想定されるリスクへの対策

まずは書面が揃っていることを確認したうえで、今の会社にとって適正なものかどうかをチェックしてください。労務管理をきちんと見直せば、予想されるリスクに備えた体制作りを行えます。

以下では、事業承継で想定される労務リスクへの対策を詳しくみていきましょう。

◇社内規程の作成や見直しを行う

法律や経営方針に準じた社内規程であれば、将来のトラブル防止につながります。また、就業規則には働くうえでのルールや労働条件を示すことができます。業務効率化にもつながるため、きちんと作成しておきましょう。

【対策できるトラブル】

・就業規則が存在していなかった

・雇用契約書に不備があった

◇人事制度の整備を図る

人材活用により組織を発展させる、人事制度。従業員のスキルやモチベーションを重視する会社は、社会的にも信用のある会社といえます。逆に人事制度が整っていないと、事業発展の妨げになる恐れがあります。

【対策できるトラブル】

・現経営者が勝手に賃金を決めていた

・コスト削減のために請負契約をしていた

・未払い残業代、不当解雇が表面化した

◇給与計算の代行サービスを活用する

給与計算に少しでもミスがあれば、会社と従業員の信頼関係が崩れてしまうもの。とはいえ事務処理には時間がかかり、人為的ミスによりトラブルが起きやすくなります。給与計算の代行サービスを活用することで、労務リスクを回避しましょう。

【対策できるトラブル】

・残業代の問題が解決していない

◇保険の手続きを外部委託する

保険の事務処理にも時間と人件費がかかり、従業員とのトラブルに発展しやすいとされています。雇用保険や健康保険、労災保険などの手続きをアウトソーシングして、業務効率化を図りましょう。

【対策できるトラブル】

・あいまいな雇用契約により、所得税及び消費税の負担が生じていた

◇退職金支払いによる株価引き下げ、年金受給との調整を行う

節税や資金確保を行うためには、退職金支払い時の株価引き下げ、年金受給との調整が挙げられます。経営を安定させて、労務リスク回避につなげましょう。

【対策できるトラブル】

・借入金などの返済に充てられる確実な資金がない

・過大な役員退職金として、個人も法人も課税されることとなった

◇議事録を作成しておき、退職給与規程を定めておく

役員の報酬・退職金については、株主総会や取締役会を開き、議事録を作成しておく必要があります。また、従業員においても退職給与規程があることが望ましいとされています。金額算定の基礎となる「功績倍率」を設けるなど、柔軟に対応できる規則を定めておきましょう。

【対策できるトラブル】

・退職金規程がないことが発覚した

・退職後の給与と年金受給の調整を行わずに、減額された

■まとめ

社会構造の多様化により、労務管理の重要性が近年ますます高まっています。事業承継で想定される労務リスクを把握しておき、より安定した会社経営を行いましょう。

なかなか労務管理にまで手が回らないときには、社会保険労務士や労務コンサルティングなどの専門家に相談してみるのも一つの方法です。