会社の資産総額より、負債総額が上回ってしまう状態を債務超過といいます。
債務超過の場合、中小企業の事業承継には様々な問題が生じています。
今回は、債務超過している中小企業が事業承継する際の問題について、ご紹介していきます。
目次
■中小企業が抱える債務超過にまつわる事業承継の問題
債務超過している中小企業は、事業承継に問題を抱えていることが多くあります。ここでは、実際にどんな問題を抱えているのかについて見ていきます。
◇自分の代で廃業を希望する経営者は4.9%
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「『事業承継』『職業能力承継』アンケート調査(2005年12月)」によると、「承継アンケート」回答企業経営者のうち4.9%の経営者が廃業を希望しています。
その理由は「会社の経営状況が厳しいため」「適切な後継者が見当たらない」「市場の先行きが不透明である」といったものに大きく分かれます。
◇債務超過に陥っている会社での廃業検討理由
債務超過に陥っている会社が廃業を検討する理由としては、「市場の先行きが不透明である」が45.5%と一番多く、次に「会社の経営状況が厳しいため」が36.4%、「適切な後継者が見当たらない」が18.2%と続きます。
後継者がいないというより、市場の先行き・経営状況の厳しさ等、会社の経営自体を理由に廃業を検討する場合がほとんどです。
また、債務超過のため廃業せざるを得ない中小企業が一定数あることがわかります。
◇しかし、債務超過でも事業承継を希望する会社は存在する
しかし、債務超過だからといって事業承継を希望しない会社だけではありません。
債務超過なら会社を続ける方が一見大変そうですが、事業承継を希望する理由はいくつかあります。
まずは、廃業自体にもコストがかかるということです。
登記や法手続き、不要設備の処分費用等、特に手続き関連を専門家に依頼すると、それなりのコストがかかってしまいます。
また、経営者が金融機関からの借り入れに対する個人保証を行っているため、事業を継続しなければならない場合もあります。
この場合、その個人保証を後継者に引き継がねばならないため、スムーズな事業承継へのネックとなってしまいます。
これらのように、債務超過していても事業承継を希望する会社は存在しますが、無理な事業承継をしても結果的に倒産してしまうなど、うまくいかないケースも多くあります。
では、債務超過していても事業承継を行いたい場合、どのように行動すればよいのでしょうか。
■事業承継には債務超過の解消が最優先
債務超過していても事業承継を行いたい場合は、債務超過を解消することを一番に考えましょう。
仮に債務超過したまま後継者に事業承継をしたとすると、後継者はその債務も同時に引き継ぐことになります。
債権者は当然、その債務を履行しようとしますし、その権利行使を後継者が止めることはできません。
つまり、債務超過している会社の経営の実権は、後継者ではなく債務者にあるといっても過言ではないのです。
債務超過している会社を事業承継する場合は、すぐ実行に移すのではなく、まず債務超過をいつ・どのように解消するのか計画・実行するところから始めましょう。
■合併による事業承継も可能
債務超過のうえ、適切な後継者もいないが事業承継したい場合はどうすればよいのでしょうか。その場合は、会社を合併(買収)してもらうという手段があります。
一見、債務超過の会社を買い取ってもメリットがないように思えますが、2つのメリットが存在します。
◇自社株式の引き下げ
債務超過の会社を買い取れば、利益・純資産価額が下がるため、自社株の価値が下がります。このことにより、節税効果を得ることができ、買い取り先の会社にメリットがあるといえるでしょう。
◇取引口座等、ビジネスチャンスの引き継ぎ
上場企業の下請けをしていた等、経営自体は赤字でも良質な取引が債務超過会社にあった場合、買い取り先の会社はその取引口座をそのまま引き継ぐこととなります。
今後も事業の拡大が見込めるというような買い取り先の会社にとっては、ビジネスチャンスを広げるというメリットになるのです。
■まとめ
債務超過の場合でも、事業承継を希望する会社は一定数存在します。
その場合、まず債務超過の解消を目指し、難しければ合併(買い取り)による事業承継を行うとよいでしょう。
どちらにせよ、適切な事業承継を行うためには、事前の専門家への相談をおすすめします。