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中小企業のためのグループ経営戦略 ~複数の事業を擁する経営者が抱える問題とその対応方法1~

記事作成日2017/10/06 最終更新日2017/10/06

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問題

複数の異なる事業部門を持つ経営者の多くは共通した悩みを持っています。よく耳にする悩みは、1.事業ごとの財務状況が見えない、2.役員会での意思決定の遅さ、3.従業員の不満への対応、4.後継者をどうするか、の4点です。今回は「1.事業ごとの財務状況が見えない」について考えていきたいと思います。(2~4は次回以降に掲載予定)
複数の異なる事業が拡大していくと、それぞれの財務状況が把握しづらくなって行きます。これを解消する手段として、事業別損益計算書の作成があります。
しかし、一般的に売上高や売上原価のような事業ごとの区分が明確になっているものについては、正確に作ることができますが、管理部門の給与・水道光熱費など事業ごとに区分ができない共通の経費については、正確に事業別損益計算書に反映することが難しくなります。
その結果、それぞれの事業ごとの事業別損益が黒字であっても、共通経費の配分を考慮すると、ある事業部門では赤字になっている恐れがあります。そのため事業別損益計算書では正確な財務状況の把握が困難であり、未然に防げた問題を抱えたままにしている恐れがあります。

検討

この問題を解決するためには、正確な財務分析が必要になります。そのため、持株会社制度の導入を検討します。
持株会社(ホールディングカンパニー)とは、他の会社の株式を保有することにより、その株式発行会社の事業活動を管理・支配する会社のことです。
今回は、他の会社の株式保有のみを目的とする持株会社(純粋持株会社)を設立し、それぞれの事業部門を独立した子会社にする持株会社制度を用いて、持株会社制度が財務分析の観点から、どのようなメリットとデメリットがあるかをご紹介します。

メリット

事業部門を子会社化することにより、各事業がそれぞれ独立した会社となります。これによって、管理部門などの共通経費は各社に帰属することになります。不明確であった部分が解消され、各社の財務分析が可能になります。
また、財務状況が把握できるようになることで、従業員の<コスト意識>や<経営意識>が向上していくことにつながり、各社が自立した経営を行うことができるようになります。

デメリット

その一方で、グループ全体の財務状況は見えづらくなりますが、連結管理会計の導入でグループ全体の財務状況は見ることができます。コスト面では、各社に管理部門ができることによる間接経費の増加が考えられますが、その点は上記メリットによる業績拡大の効果により対応することができます。
また、事業部門が子会社化したことにより、各社の自立性や主体性が高まりますが、企業グループとしての求心力の低下が考えられます。そのような事態にならないためにも、企業グループの経営理念や経営ビジョンをしっかりと確立し、それを企業グループ全体で共有する体制づくりが大切になります。

問題の解決

それぞれの事業部門が各会社となることにより、事業別に分けることが難しかった共通経費は明確に区分され、会社ごとの当期純利益まで損益計算書が作成できるようになります。財務状況が一目でわかるようになるため、それぞれの事業部門が抱えていた問題点や改善策が浮かび上がってきます。また、各社ごとの貸借対照表も作成できることより、効果的な財務分析が可能となります。