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円滑化法の改正で事業承継はどう変わる?

記事作成日2017/09/12 最終更新日2017/09/12

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日本経済を支える中小企業の大きな課題である事業承継問題。国は、事業承継問題について様々な方策を講じており、その中でも円滑化法による税制等の措置は、問題解決における大きな支援として注目されています。
今回は、円滑化法や関連法の改正についてご紹介いたします。

円滑化法とは

5.円滑化法の改正で事業承継はどう変わる?円滑化法は、平成20年に施行されました。正式には、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」と言い、「経営承継円滑化法」「円滑法」などと呼ばれています。(以下「円滑化法」に略。)その名の通り、中小企業における事業(経営)承継の円滑化を図る法律です。

円滑化法による施策

事業承継税制:自社株の相続・贈与に関わる税負担の猶予または免除
民法の特例:自社株を遺留分の算定基礎財産から除外
金融政策:事業承継に必要な資金の融資

中小企業は、日本企業の9割以上を占め、多くの雇用を生み出し、日本経済の基盤を形成している存在です。(中小企業庁 「中小企業・小規模事業者の現状と課題」

つまり、中小企業の多くが抱える事業承継問題を解決し、中小企業の事業活動の継続・発展に繋げることが、円滑化法制定の目的と言えます。

円滑化法の改正内容

平成28年4月1日、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律」が施行されました。円滑化法の改正内容は以下です。

遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充

遺留分特例制度は、相続紛争や自社株の分散を防止し、後継者へスムーズに事業を承継することを目的とし、現経営者から後継者に贈与等された自社株について、一定の要件を満たしていることを条件に、遺留分の算定の基礎となる相続財産から除外する(除外合意)、遺留分算定基礎財産に算入する価格を合意時の時価に固定する(固定合意)、といった取り決めができる特例です。これまで、特例制度の対象が親族内承継に限定されていましたが、親族外承継の際にも適用されるようになりました。

独立行政法人中小企業基盤整備機構による事業承継やサポート機能の強化

独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、「中小機構」に略)が、事業承継に関わる計画的な取組を後押しするため、経営者、後継者等に対し、必要な助言等のサポートを行えるようにしました。これに併せて、小規模企業共済法と、中小機構法(独立行政法人中小企業基盤整備機構法)も一部改正されました。

小規模企業共済法の一部改正

個人事業者が親族内で事業承継した場合や、65歳以上の会社役員が退任した場合の共済金を引き上げました。小規模企業者の経営状況に応じた掛け金の変更を柔軟にしました。

中小機構法の一部改正

更なる事業承継サポート機能を強化しました。共済加入時の「申込金」の手続きについて、金融機関への委託業務を廃止しました。

円滑化法等の改正によって何が変わるのか

遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充 ⇒ 親族外事業承継の円滑化へ

昔、特に20年程前までは、事業承継の後継者は親族内が9割でしたが、近年は親族外承継が約4割と増加傾向にあります。(中小機構 「中小企業経営者のための事業承継対策」)このため、親族外承継を円滑にするための措置が必要になりました。親族外承継の障害を取り除き、事業承継を円滑にし、中小企業の事業継続を促すためにも、親族外への拡充は必要な改正と言えるでしょう。

中小機構の事業承継やサポート機能強化 ⇒ 事業承継相談の窓口を更に広く強固に

中小機構は、経済産業省管轄の独立行政法人で、中小企業の施策の総合的な実施機関としての役割を果たしています。創業や事業再生、災害対策のセーフティネットまで、中小企業のライフステージや課題に合わせた支援体制を整え、全国9カ所の地域本部を持った巨大機関です。

中小機構には、改正前から事業承継のサポート機能(相談や助言)がありましたが、改正により、『旧代表者(経営者)、後継者その他その経営に従事する者に対して、その経営の承継の円滑化に関し必要な助言を行うものとする。(15条2)』と追加したことで、中小機構の事業承継サポート機能について強化しました。

中小機構は、情報提供や相談だけではなく、共済や貸付け等、資金面の支援を持つ機関ですから、改正によるサポート機能の強化は、事業承継において発生する金銭面の問題を解決するために必要なものです。

小規模企業共済法の一部改正 ⇒ 環境の整備により事業承継の円滑化へ

小規模企業共済は、中小機構の運営する、経営者や役員の廃業や退職後の生活の安定を図るための、いわゆる退職金(共済金)制度です。改正によって、廃業した場合が最も高くなる共済金の支給について、親族内承継の場合でも同額の共済金が支給されることになりました。

これは、廃業の道より、事業を承継する道を選ぶ理由が増えたことになります。また、65歳以上かつ15年以上加入の役員について、役員に在籍したまま高額の共済金が支給される老齢給付がありますが、改正により、退任した場合も老齢給付と同額の共済金が支給されることになりました。これも、役員を続ける道ではなく、世代交代の道を選択する理由の増加となります。

このように、共済金制度に、事業承継の道を選ぶメリットを増加させることで、円滑化を後押しする環境整備がされました。ちなみに、「掛け金変更の柔軟化」や、中小機構法の「共済加入時の申込金手続きの金融機関への委託業務廃止」も、現金を動かしやすくなるという意味で、円滑化を後押ししていると言えるでしょう。

中小企業の事業承継問題を解決するための、基礎となる円滑化法。制定時から数年が経ち、事業承継問題がより具体的に理解されたことや、事業承継方法の多様化で、一部が改正されました。今後も国の対策・対応が進化・変化していくことは十分に考えられるため、最新の情報を手に入れ、自社に合う事業承継方法を計画することが重要です。

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