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事業承継時の贈与税負担を軽減するには

記事作成日2017/09/19 最終更新日2017/09/19

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経営者が存命時に後継者に資産等を引き継ぐと、贈与税がかかります。中小企業の事業承継には節税対策は欠かせない課題と言えるでしょう。贈与税の負担を軽減するためには、どうしたら良いのでしょうか。

中小企業の事業承継を円滑化する税制

20 事業承継時の贈与税負担を軽減するには日本にある会社の約99.7%が、中小企業と言われています。全国各地で地域経済を支えている中小企業の状況は、少子高齢化に伴った労働力人口の低下や後継者不足、さらには経営者の高齢化といった様々な問題を抱えていると言えます。(中小企業庁「中小企業・小規模事業者の現状と課題)このような背景から事業承継をスムーズに行えるように「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律(承継円滑化法)」が施工されました。

具体的には、相続税や贈与税といった納税負担の一部が猶予される、後継者が生前贈与された自社株を遺留分の対象から除外できる、事業承継にかかる資金について低利融資を受けられる等が挙げられます。中でも後継者の納税資金を、貸付等で会社が負担する場合は、せっかく引き継いだ事業であっても財政状態を悪化させる可能性があるため、税制の優遇を活用した早めの対策が必要であると言えるでしょう。

贈与税納税猶予の特例とは

事業承継において、現経営者から資産を譲り受ける際にかかる税金が贈与税です。贈与税納税猶予の特例とは、贈与された資産の中で、自社株についての納税が猶予(引き延ばし)できるというものです。

後継者に贈与される自社株について、全体の発行済株式総数の2/3までの範囲で贈与税の納税が猶予されます。この特例を活用することで、納税負担を軽減し、円滑に事業承継をすることができると言えるでしょう。なお、後継者が贈与前に自社株を保有している場合には、その分も含めることになっています。「贈与前の株式+贈与された株式=全体の発行済株式総数の2/3」と理解すると良いでしょう。

贈与によって、後継者の株式の保有比率が2/3以上になったら、超えた部分については納税猶予の適用外となります。また、贈与した現経営者が亡くなった場合は、猶予されていた贈与税が免除されます。これは、相続または遺贈により取得したものとみなされるためです。

このように納税猶予は事業承継を円滑にするための税制とも言えるため、しっかり理解して活用すると良いでしょう。手続きには都道府県知事の認可を受け、必要書類の提出もありますから、専門家のアドバイスを受けながら手続きすることをおすすめします。

贈与税の納税猶予を受けるには

贈与税の特例を受けるためには、まず現経営者(贈与者)から、全部または一定数以上の非上場株式等を取得する必要があります。

次に、承継円滑法に基づいて、(1)会社(2)現経営者(3)後継者(受贈者)が一定の要件を満たしている必要があります。さらに、要件が満たされていることについて、都道府県知事から認定を受ける必要があります。そして、贈与税の申告期限までに、必要書類を税務署へ提出します。また、納税が猶予される贈与税額及び利子税額に見合う担保も提供する必要もあります。

これらの要件をクリアしても、納税猶予期間中にも贈与税の特例を受け続けるための要件があるため注意しましょう。後継者が代表ではなくなった、贈与時の雇用者数から80%を下回ってしまった、資産管理会社に該当した等の場合は、納税の猶予を受けている全部または一部を利子税額と共に納める必要があります。事業の継続時にも充分注意しましょう。

贈与税の納税猶予を受けるためには、現経営者が保有する自社株の多くを継承しなければならないことから、迷いが出てしまうことも考えられます。時として思い切った決断が、後継者への負担軽減に繋がる場合もあります。事業を途絶えさせないためにも、贈与税の納税猶予の仕組みを理解し、円滑な事業承継に結びつけましょう。

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