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事業承継を合併で行うメリット・デメリット

記事作成日2017/09/19 最終更新日2017/09/19

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親族や従業員の中に後継者候補がいない場合でも、事業承継を望む場合には「合併による事業承継」という手段もあります。

M&Aの種類

33 事業承継を合併で行うメリット・デメリット

合併は「M&A」の種類の1つです。
そもそもM&Aは「合併と買収」(Mergers and Acquisitions)という意味であり、広義の企業提携を指すことが一般的となっています。「敵対的買収」など良くないイメージがあるかもしれませんが、本来は双方にとって価値のある企業提携の形を模索していきます。

そして、M&Aは事業承継における立派な手段の1つなのです。M&Aの種類は「合併」「買収」「業務提携」の3つに大別できます。なお、合併の中にも「吸収合併」(存続する1つの会社が他方の会社を吸収する合併)、「新設合併」(当事者の会社が消滅し、代わりに新会社を設立する合併)の2つの方法がありますが、いずれも登記申請が必要となります。

合併による事業承継のメリット

合併による事業承継の最大のメリットとしては、「事業承継問題(後継者問題)の解決」が挙げられます。跡継ぎがおらず困っている経営者も少なくありませんが、合併という手法を使うことで、良い候補者を外部から探すことができます。

仮に跡継ぎ候補がいるとしても、意欲や能力が不足する場合には不安がつきまといます。親族や従業員を無理に跡継ぎとした場合、事業が立ち行かなくなり、結局大勢の従業員や取引先に迷惑をかける可能性もゼロではありません。

それよりは、経営者の想いに賛同する有能な事業承継者を新オーナーとした方が、今後の会社の発展にとってもプラスとなるでしょう。納得のいく形で合併することができれば、事業承継問題(後継者問題)が解決した精神的な安心感のみならず、相当額の利益を得ることができます。

さらに、会社を手放すことで、株式に係る遺産相続や高額な相続税の発生を防止できるケースもあるため、うまくいけば売り手・買い手にとっての理想的な取引となります。

合併による事業承継のデメリット

合併における事業承継のデメリットとしては「企業融合がうまくいかない可能性がある」ということが挙げられます。企業文化が衝突してしまい、思わぬ摩擦を起こすケースがあるということです。

これにより大切な従業員に苦労をかけたり、あるいは離職に追い込んでしまう可能性があります。なお合併において、買い手の会社が株式を発行するケースも多いのですが、それが非公開株式の場合、売り手がそれを現金化することは難しいと言えるでしょう。

合併による事業承継の注意点

合併に限らずM&Aによる事業承継では「秘密保持」と「入念な準備」が必要です。特に準備段階では、外部に情報が漏れないよう細心の注意を払う必要があります。しかし一方で、M&Aの相手方の信頼を損ねるような秘匿・隠蔽は避けなければなりません。

また、入念な準備は「会社の実力の磨きあげ」とも呼ばれるステップです。具体的には、業務改善から経費支出の無駄の削減、社内規定やマニュアルの整備、業務権限委譲についての計画作成など、できるだけ最良の状態でM&Aに臨めるようにします。

なお、合併に限った事業承継の注意点としては、消滅する会社側の「簿外債務の包括的承継」「労働契約の承継」を挙げることができます。簿外債務とは年金基金や会社のリースを指しますが、合併ではこれらも承継されます。ここをきちんと把握し、処理することを忘れないようにしましょう。

また、消滅する会社側の労働契約が承継されたとき、合併会社の従業員のそれと大幅とかけ離れる事態は避ける必要があります。これは、不公平感を生み出し、社内の人間関係悪化や、モチベーションの低下につながる危険な要素です。これも、合併における忘れてはならない注意点として挙げることができます。

事業承継問題(後継者問題)の解決手段として、合併は検討に値する方法の1つです。大企業がメインというイメージのM&Aですが、中小企業のケースも年々増加傾向にあります。(中小企業庁 「事業承継に関する現状と課題について」

合併による事業承継のメリット・デメリットを踏まえつつ、専門家にも相談してみましょう。

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