「組織を活性化させて、会社を良くしたい」
「社員が長く働ける魅力ある会社にしたい」
そんな想いを胸に様々な取り組みを行っている経営者や人事責任者の方は多いでしょう。
近年では、従業員満足度調査や管理職・役員候補者研修、1対1面談を実施したり、ミッション・ビジョン・バリューの再構築、インターナルブランディングに取り組む会社が多いです。一方で、「思った成果が得られない」「継続することが難しい」という相談をいただくことが増えました。
今回は、組織の活性化施策の落とし穴、失敗原因に加えTOMAが提案する人材定着のための顧問サービスをご紹介します。
大切な社員に長く働いてもらうために
人口の減少、超高齢化社会、転職を繰り返してキャリア形成をするジョブホッパーの増加など優秀な人材の採用、定着の難易度は年々高くなっています。厚生労働省が発表した「令和4年雇用動向調査結果の概況」や「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によると、退職をした理由で多く挙げられるのは以下の通りです。
・労働時間・休日など労働条件が悪い
・職場の人間関係が好ましくない
・仕事内容が自分に合っていない
一方で、会員数40万名のダイレクトリクルーティングサイトを運営する株式会社学情が就職活動中の大学生・大学院生を対象に行ったアンケートによると、新卒で入社した会社で10年以上働きたいと考えている学生の割合は5割を超えるデータもあります。
参考)
厚生労働省:令和4年雇用動向調査結果の概況
厚生労働省:平成30 年若年者雇用実態調査の概況
PR TIMES:あさがくナビ2023「仕事観に関するアンケート」
「長く働くことで、入社時に育ててくれる会社に貢献したい」と、夢を持って入社した社員が、大きく成長できるように支援したいところです。
そのために実施することが従業員満足度調査や1対1面談といった施策です。施策を打ってもうまくいかない、退職者が減らないと感じているのであれば、実施内容に問題があるのかもしれません。各施策の失敗原因を以下にまとめました。
従業員満足度調査の失敗原因
従業員満足度調査とは、社員の職場に対する意見や考えを収集し、会社の組織改善に役立てる調査です。調査が適正に行われ、分析が改善策へとつながれば大変有意義なものになりますが、以下のような状況に陥ってしまう会社が多いようです。
失敗原因1:社員への説明不足で調査に真剣に取り組んでもらえなかった
なぜ従業員満足度調査をするのか、調査結果を会社の組織改善に向けてどう扱うのかといった事前の説明が不十分で、社員が真面目に調査に取り組まないケースがあります。また、回答に対する秘匿性への不信感から本音を書いてもらえないこともあります。
失敗原因2:調査することが目的になり、調査結果をどう反映させていくかが不明瞭だった
従業員満足度調査の目的は結果を会社の改善に繋げていくことです。「調査に協力してもどうせ会社は良くならない」と思われていては、どれだけ質問項目が優れていても失敗するでしょう。経営者が調査を糧に本気で会社を変えていこうとする意志を示すことが大切です。
失敗原因3:調査内容が現状と合っていない、質問量が多すぎる
従業員満足度調査は質問内容も重要なポイントです。現場の実情に即していない質問が多かったり、質問量が多すぎるとうまくはいきません。質問内容を検討する場合は、現場の上長などを巻き込むことが大切です。
失敗原因4:調査を行っても出てきた課題の何から手を付けて良いか分からない
せっかく調査を行い、課題を見える化しても、複数ある課題の中から何を優先すべきかが決定できないケースもあります。全ての課題を同時に対策しようとして、どれもが中途半端になってしまったり、本来急務である課題を後回しにしたりすると、せっかくの調査を有効活用できません。
1対1面談の失敗原因
1対1面談とは、上司と部下がマンツーマンで定期的に行う面談のことです。部下の悩みや関心事を吸い上げ、適切なアドバイスを送ることで仕事へのモチベーションアップや成長をサポートすることが目的です。
失敗原因1:1対1面談を社員が重要なものだと認識していない
「1対1面談は業務の隙間に行えばいい」、「繁忙期は実施しなくてもいい」と面談に対する優先順位が低い社員が多い場合は危険です。上司と部下どちらか一方でも面談の意義・目的を軽視していれば、面談は良いものにはならないでしょう。
失敗原因2:話し合う内容を精査していない
「なぜ1対1面談を行うのか」を上司が理解し、そのためにどんな面談にすれば良いかをしっかりと考えないと、単なる世間話だけで面談が終了してしまいます。
そんな面談が続けば徐々に「この面談はやる意味があるのか」「もっとほかにやることがあるはずだ」と1対1面談に対する意識が低下していきます。
失敗原因3:上司が高圧的な態度で行ってしまう
いくら真剣なものだからといって、上司が高圧的な態度や口調で面談を行ったり、部下に必要以上に高い課題を出したりしても失敗します。部下が本音を話してくれて、お互いの信頼関係が築ける場を作ることが大切です。
失敗原因4: 上司が1対1面談の進め方を分かっていない
1対1面談では、部下よりも上司の面談スキルが重要です。効率的な進め方や話し方、話す内容は全社レベルで研修を行い、面談力を磨く必要があります。
管理職・役員候補者研修の失敗原因
管理職・役員候補者研修とは、将来、会社を担っていく社員に向けて必要となる知識やスキルを習得してもらうための研修です。部下をまとめるリーダーシップ、問題解決能力や、決断力、新人の育成力など幅広い能力を養います。
失敗原因1:候補者の選定ミス
名選手が必ず名監督となるわけではないように、管理職よりもプレイヤーとしての方が実力を発揮できるという社員は少なくありません。
研修後に管理職・役員としての目線で会社を俯瞰し、未来を構築できる人材ではないと判断した場合は候補者を再考する必要もあります。『研修を受ける=管理職・役員への確約』ではない旨を事前に伝えておくことも重要です。
また、近年は給与が上がっても管理職になりたがらない社員もいます。社員の考え、意見をしっかりとヒアリングした上で候補者を選定することが大切です。
失敗原因2:研修がインプット重視になっている
身につけてもらいたいスキル、知ってほしい知識ばかりに注力してしまい、本当の意味で理解できているのかを確認するアウトプットが不足しているケースもあります。研修はバランスが重要です。
失敗原因3:体系的な育成(研修)計画がない
有望な社員の研修に力を入れるだけで、成長の度合いを測る機会を設けていない会社も多いです。管理職・役員候補者育成とは、数日の研修日程をこなすことではありません。数ヶ月・数年単位で体系的な育成計画を組むことが重要です。
ミッション・ビジョン・バリュー
ミッション・ビジョン・バリューとは、経営理念や企業理念などを表すものです。ミッション・ビジョン・バリューを掲げることは、社内外に対して自社の存在意義や社会貢献の仕方を表すことであり、VUCA(※)時代における会社経営の道しるべとなります。
※Volatility(変化)・Uncertainty(不確実)・Complexity(複雑)・Ambiguity(曖昧)の頭文字を取った造語。社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを指します。
失敗原因1:ミッション・ビジョン・バリューのそれぞれの意味を理解していない
それぞれの意味を理解せず、単純に売上目標をミッションとして掲げている会社も少なくありません。
・ミッション 「自社が事業活動を行う目的」「会社の存在価値」を言語化したもの。
・ビジョン 会社の将来的な理想像を言語化したもの。
・バリュー ビジョンに近づくため、社内の人間一人ひとりが心がける行動指針を表したもの。
しかし、ミッション・ビジョン・バリューに明確な定義がないというのも事実です。だからこそ本当の意味を理解した上でミッション・ビジョン・バリューを構築する必要があります。
失敗原因2:経営者の想いが反映されていない
「成功している会社を真似しているだけ」、「指示を出して、あとは部下任せ」というケースも少なくありません。たとえ同業者であっても1社1社、歴史も社風も目指すべき姿も違います。他社を真似しただけのミッション・ビジョン・バリューでは、社員の心には響きませんし、浸透もしないでしょう。
失敗原因3:経営者が独断で決めてしまう
経営者の想いが反映されていないことも失敗する原因ですが、経営者が一人で全てを決めてしまうこともよくある失敗例です。会社の規模が大きくなれば経営者が現場の状況を正確に把握することは困難になります。
経営者が主導となるのは間違いではありませんが、現場の責任者の意見を吸い上げ、全社員が一丸となり目標に向かって突き進めるミッション・ビジョン・バリューを策定することが大切です。
失敗原因4:実現不可能な目標を立ててしまっている
自社の現状に合わない「耳心地が良いだけの目標」や「達成不可能な売上目標」を掲げているケースも散見されます。現実と乖離したミッション・ビジョン・バリューでは、建設的な戦略の立案や目標の設定ができません。
実現に向けてPDCAを回すこともできず、結局目標がないものと同義になってしまいます。
インターナルブランディング
インターナルブランディングとは、ミッション・ビジョン・バリューなどを社員に浸透させ、会社のブランド力を内側から高める手法のことです。
失敗原因1 :ブランディングする自社の理念がない
経営理念やミッション・ビジョン・バリューといった自社の柱となるものがない、あるいは不明瞭である場合、インターナルブランディングを行っても社員に響きません。
ブランディング内容が自社に適したものではない場合、価値観の押し付けになってしまい、施策を行えば行うほど社員の気持ちが離れるケースもあります。
失敗原因2:短期で成果を求めすぎている
インターナルブランディングの効果を得るには、長い時間がかかります。
また、本当に経営理念が社員に浸透しているかどうかを測るのは難しく、普段の行動や社員の意欲を敏感に感じ取りながら効果を測るしかありません。すぐに効果が出ないからと無理やり思想を押し付けないようにしましょう。
失敗原因3:セオリーに頼りすぎる
一般的なインターナルブランディングの手法を真似て実施しているケースが散見されます。それ自体が悪いことではありませんが、自社の状況や社風に合わせたものでなければ効果は薄いでしょう。
TOMAの人材定着のための顧問サービス
いかがでしたでしょうか。各施策の“よくある失敗とその原因”を集めてみましたが、皆さんの中でも思い当たる節があったかもしれません。「うまくいかない原因がわからない」「専門知識を持たない社員だけの対策に限界を感じている」という場合は、人材組織開発のプロフェッショナルに任せるのも一つの有効な手段です。
TOMAでは、人材定着に悩む会社への顧問サービスを提供しています。丁寧なヒアリングから課題を抽出し、中小企業支援40年の経験から、主に以下の点について適切な施策をご提案します。
【従業員満足度調査】
満足度調査実施後の結果を踏まえて、最善の取り組みをご提案します。社員の声を分析し、次回の調査に向けた改善策の実施により組織の成長につなげます。
【1対1面談】
個々の社員の声を大切にし、そのニーズや悩みを解決するためのコンサルティングを行います。これにより、社員の満足度と生産性を向上させます。
【管理職研修・役員候補者研修】
研修の効果を最大限に引き出すため、研修後のフォローアップを徹底します。研修の内容を踏まえて、実務に活かすための支援を行います。
【ミッション・ビジョン・バリュー】
貴社で作成されたミッション・ビジョン・バリューを全社員に浸透させ、一体感を生み出します。ミッション・ビジョン・バリューに共感し、行動する社員を増やすことで定着率を改善します。
【インターナルブランディング】
社員一人ひとりが会社のブランドを理解し、その価値を体現する行動をとるよう促します。これにより、組織全体が活性化し、結果として会社の競争力を高めます。
今回紹介したサービスの詳細はこちらになります。また、TOMAでは定期的に人材定着に関するメールマガジンを配信しております。こちらもぜひご登録ください。
著者情報
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役専務
ビジネスサポート部 部長 税理士・行政書士
陣内 正吾
人材開発・組織開発のみならず、事業承継や税務も含め多くの中堅・中小企業へのコンサルティングサービスを推進。TOMAのビジョン浸透のため2018年に10年後の自社の未来を考える全社プロジェクト「SHIFT TEAM」を発足させるなど、社内の組織改革を率いる。