2023年5月1日

【2023年卒版】今年の新入社員、どんな人か知っていますか? 特徴や課題、指導・育成のコツを解説

人材育成

近年、新卒社員の早期離職など人材育成に課題を抱えている企業が増えています。その原因として、管理職が新卒社員との関わり方が分からないために、部下に対して適切な指導・育成ができていないケースがあります。

あなたの職場でもこのようなことはないでしょうか?

・数年前から新卒採用・育成を始めたが、早期離職が多く、うまくいっていない
・初めて(あるいは久しぶりの)の新卒採用で、新卒社員との関わり方が分からない
・新卒社員と親交を深めたいが、飲みに誘っていいか分からない
・パワハラが注目される昨今、それを気にするあまり部下指導がしにくい

職場の管理職の方が新卒社員のことを理解し、適切な指導・育成ができるようになるにはどうしたらよいか?

2023年卒の新入社員の特徴や求められる指導・育成についてご紹介します。

人材育成や離職対策を頑張ってはいるが…

職場で若い世代の部下を持つ管理職から、こんな声を聴きます。

「どうしてこんなに若い社員に気を遣わなくてはいけないのか…疲れる…」

2022年4月から、中小企業を含むすべての事業主に「パワーハラスメント防止措置」が義務化されるなど、近年、ハラスメントに対する意識の高まりから、マネジメントも以前と比べ、より複雑になっています。職場の管理職においては、業務指導とパワハラの境界線の難しさに、思い切った指導ができない、極端な気遣いをせざるを得ないという声を多く聞きます。

また、厚生労働省の調査によると、中小企業では、高卒・大卒ともに就職後3年以内に4~6割の新入社員が離職しています。入社後の定着についても課題を抱える会社が少なくありません。

 

このような状況の中で、さまざまな人材育成や離職対策の取り組みを行っているにも関わらず、「がんばっていると思ったら突然辞める」「優秀な部下ほど辞めていく」などのケースが多く見られます。

ここに、新卒社員という「若い世代」と職場の「オトナ」との悲しいギャップが見て取れます。

 

まずは、世代間の価値観の違いを理解する

このような若い世代と「オトナ」とのギャップは、今に始まったことではありません。

古くは、今から約5,000年前、ピラミッドの建設に携わった人々が、ピラミッドの天井裏などに「近頃の若者は」と、書き残したというのは有名な話です。また、日本でも、平安中期の女流歌人の清少納言は代表作「枕草子」の中で、「最近の若者は」と、若者の言葉遣いへの嘆きを記しています。

職場に置き換えると、

戦後の日本企業は「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」といった企業経営により、各世代が階層のように積み重なって、世代の異なる人たちが一緒に仕事をすることが一般的です。そうなると、どうしても世代間のギャップを感じる方が多くなります。

現在は管理職になっているような世代の方でも、自分が新卒入社の際に先輩や上司との世代間ギャップを感じた方も多いのではないでしょうか。

 

世代間の価値観の違いの原因としては、特に社会人デビュー前後の数年間に形成された「就業意識」や「仕事に臨むスタンス」の原型が、その時代の経済環境や企業の勢い、労働市場の需給関係に影響を受けやすいことが考えられます。

働く目的や会社への忠誠心、オンとオフの切り替え方などは、特に世代の特徴が出てくるところです。

このように、会社で働く人は、それぞれの世代によって仕事に対する意識やスタンスの原型が異なることがあります。

そのため、職場の管理職は、自らのこれまでの成功体験に囚われることなく、若い世代の価値観や特徴を理解することが部下指導の第一歩です。

 

2023年卒の新入社員の特徴

では、今年度の新入社員はどのような特徴があるのでしょうか。

年間約65万名に研修を提供する株式会社インソースは、約3万2千名の新卒社員に行った研修から、2023年度新入社員の傾向と特徴を次のように明らかにしました。

 

(1)2023年度新入社員の傾向

<傾向1>即時に行動に移せる新人と移せない新人

学んだことを理解してすぐに実践する姿勢や、自主性を発揮している様子がうかがえました。例えば、ルールは守らなければいけないものと強制的に考えるのではなく、大切なこととして守ろうとする意欲が見られ、研修内でも実践できていました。

一方で「あいさつが大切」と言葉にはしていても、実践が求められるような場面では声に出すことができていないなど、実行動につながっていない新人も少なくありません。

<傾向2>自他尊重の傾向があるが、良くも悪くも自分基準

自分の考えをしっかりと持っており、堂々と気後れせずに発言できていました。また、自分の意見だけでなく、他者の意見についても尊重できている点が特徴的でした。

ただ、明らかに何か問題がある場合でも「できている」にチェックをするなど、人から自分がどう見られているのかが意識できていない、自分の中で基準を低く(甘く)設定している姿も見受けられました。

(2)2023年度新入社員の特徴

<良い点>

①前向きに学ぶ姿勢がある
②理解力が高く、学んだことを即時実践・実行できるまで行う
③コミュニケーション能力が高い(傾聴力、積極的な関わり)

<課題点>

①敬語やマナーに苦手意識、課題がある
②言動やモラルに課題がある
③関心のないものへの反応が薄い、積極性が低い

引用元:インソース株式会社(2023).「新人の傾向速報と5月以降の育成について」

 

また、学生生活の大半をコロナ禍で過ごしたことによる影響として、表情が乏しい、声が小さい、長時間同じ姿勢を保てないなどの傾向があったとのことです。

オンライン授業が中心で、対面での人との関わりや外での活動が少なかったことから、他者の目を気にしないという俯瞰力の弱さも見られると述べています。

 

 

若い世代のパワーを職場に活かす

職場において新しい価値観が入ってくることは、新しいアイデアが生まれるきっかけにもなります。新卒社員の方の得意分野や素朴な発見を取り入れることで、会社の発展に活かしましょう。

ここでは、特に、仕事に関連する若い世代の特徴を挙げてみました。

自然に多様性を受け入れている

青年時代から複数のSNSを使いこなしている若い世代は、自分の考えを形成する過程で、世界中のさまざまな価値観に触れています。

そのため、「自分らしさ」や「その人らしさ」を尊重する傾向が強く、多様性を当たり前のこととして受け入れています。

仕事においても、ジェンダー、国籍、年齢が違う人が集まる環境の中で、壁を感じることなく柔軟に対応することができると考えられます。

 

デジタルに慣れ親しんでいる

日本でインターネットサービスが普及した1990年代半ば以降に生まれた世代は、「デジタルネイティブ」と呼ばれ、生まれつきインターネットやパソコンのある生活環境で育ってきた世代です。

特に、今年の新入社員の世代は、ほとんどの人が幼少期~青年期かけて個人のスマートフォンを持ち、生活必需品として活用していました。

生まれた時からインターネットが身近だったこの世代は、使ったことがないものでも感覚的にデジタル機器を使いこなしたり、インターネット上の膨大な情報の中から必要な情報を掴んだりすることに長けています。

学生時代の講義レポートなども、図書館で文献を探すよりインターネット検索を巧みに使い、情報を効率的に収集していた人も多い世代です。

仕事においても、DXによる職場の業務改善やデジタルマーケティングなどを進める上で、そうした感覚が優れていることはアドバンテージになりうると考えられます。

 

求められる指導・育成

人材育成においても若い世代にあった方法で行うことで、効果的に育成が可能になります。今年度の新入社員の傾向・特徴をふまえた上で、求められる指導・育成の形とコツをご紹介します。

 

(1)企業のビジョンと個人のキャリア観を結びつける

今年度の新入社員は、コロナ禍で、集合型の授業を受ける機会が減ったり、個人で生活を楽しんだりといった環境の中で約3年間の学生時代を過ごしました。そのため、組織に所属する感覚が薄い人が多いことが考えられます。

また、職場においても、リモートワークを行っていたり、個人で行う業務が多かったりすると、「会社の一員として行動する」「他の人と協力して仕事をする」といった感覚が希薄になりがちです。

このことは、業務においてチームワークが発揮されないだけでなく、自社の社員としての主体性や責任感の低下、離職率の増加といった悪影響が出ます。

そこで、必要になるのが、入社後早い段階で会社への帰属意識を育てることです。

そのためには、企業のビジョンと個人のキャリア観を結びつけることが必要です。

具体的な取り組みとしては、企業の経営理念、経営方針などを社長自らが新入社員に説明する場を作る、新入社員のキャリア観について上司と話し合う、などが考えられます。

また、形式的なものだけでなく、新入社員と既存社員との接触機会を意識的に増やすことも重要です。これにより、新入社員は、文面では分かりづらい組織風土を知ることができます。

新入社員の早期離職を防止する、活躍を加速させる「オンボーディング」の取り組みについては、こちらの記事をご覧ください。

 

(2)細かな「プチ承認」で社会人に求められる「基準」を根付かせる

今年の新入社員の傾向の中に、「敬語やマナーに苦手意識、課題がある」「言動やモラルに課題がある」がありました。

この背景には、若い世代の幼少期~青年期での環境が影響していることが考えられます。彼らがこれまで関わってきた学校の教師や先輩との関係は、近年、よりフラットな関係になっているため、上下関係が厳しい環境で育った人はごく一部であると考えられます。そのため、同世代同士のコミュニケーションは得意なのに対し、上意下達のコミュニケーションに慣れていない人も多い傾向にあります。

これにより、社会人に求められる「基準」はまだまだ未熟であることが考えられます。

基本的な敬語やマナーは新人研修などで学ぶことができますが、日々の業務や顧客対応の場で実践できるようになること、新入社員自身の考え方を正しいものに変えることは、また別問題です。

ここでは、日々の仕事の中で、いかに指導ができるかが重要です。しかし、逐一できていない所を指摘するのは相手にとってもいい気はしませんし、新入社員のモチベーションアップにも繋がりません。

そこで有効なのが、細かな「プチ承認」です。

新入社員の行動で、良くできた点についてはすぐに声掛けをして行動の承認をしましょう。例えば、報連相のレスポンスに一言足して返す、1on1で日頃の働きぶりを簡単にフィードバックするなどが考えられます。

声掛けの内容は、「いいね」と適切な行動に対して承認する、「よくなった」と成長を伝えるなどが良いでしょう。

本人が「良い行動とはこういうものだ」をしっかりと認識できるまで、入社してから数か月の間は、「細やかに」「具体的に」「都度」フィードバックを心がけましょう。

また、「細かなプチ承認」に加えて、「助かった」と感謝を伝える、「大変だったね」と共感するなどのコミュニケーションを加えても良いでしょう。これにより、新入社員が、上司やメンバーに親近感を感じたり、仕事の自身とやる気にも繋がり、良い効果が見込まれます。

 

(3)上司やお客様などの「相手目線」を養う

今年の新入社員の傾向の一つに、「良くも悪くも自分基準」がありました。この背景としては、コロナ禍でコミュニケーションの機会が少なく、自分本位になりがちであるということが考えられます。

一方で、職場のメンバーと一緒に仕事を進める経験や顧客対応の経験は、社会に出てきてから積むものであり、入社してから身につけていけばよいものではあります。

ただ、近年はZoomなどのウェブ会議システムを使った社外・社内コミュニケーションが増えたため、「相手目線」を感覚的に養うことが難しくなっています。

そこで必要になるのが、力を入れて「相手目線」を指導・育成することです。

「相手にどう見られるか」「相手がどう思うか」の視点を繰り返し伝えましょう。ポイントとなるのが、「相手にとって、なぜその伝え方や行動がいけないのか、理由まで伝えること」、また、「その場ですぐにフィードバックすること」です。

「相手目線」が養われていない時期は、上司やお客様に失礼とも捉えられる言動をすることもあると思いますが、感情的にならず、「相手にどう見られるか」「相手がどう思うか」の視点を繰り返し伝えることが重要です。

理解力が高く、納得ができれば、お客様のためにがんばることができる若い世代は非常に多いので、根気強く成長を見守る姿勢が大切です。

 

まとめ

今回は、今年度の新入社員の傾向や求められる指導・育成についてご紹介しました。

ただし、人材育成は全ての人に同様の内容が当てはまるとは限りません。

そのため、人材育成を行う担当者・管理職は、まず、新入社員のことを知ることが必要です。新入社員のこれまでの経験や自身が感じる強み・弱み、今後のキャリアビジョンについてまずは面談することをおすすめします。面談時には下記のキャリアシート(Wordテンプレート)がお役に立てるかもしれません。

>>すぐに使えるキャリアシートのダウンロードはこちらから!

是非、このタイミングで、これから一緒に働くメンバーのことを理解する時間を作ってみてはいかがでしょうか。

 

また、TOMAでは、新入社員の定着・人材育成のための「オンボーディング」コンサルティングを行っております。

これまでに多くのお客様に対して新入社員のオンボーディング計画の作成・実行をご支援してきた実績に加え、自社においてもオンボーディングを行なってきました。豊富な知見とノウハウを駆使してお客様をサポートします。

新入社員の早期退職や人材育成に課題を抱える企業はお気軽にご相談ください。

 

著者情報

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント

市丸 純子

2013年TOMAコンサルタンツグループ入社。現在はグループ内の長期ビジョン実現に向けた特別プロジェクトのマネージャーを務め、自社内の組織開発・人材開発に携わる。また、その経験を活かし、「100年企業を創る」をモットーに、多くの中小企業に向けて人材開発コンサルティングを提供している。

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