社員教育に力を入れたいがどうすれば良いかわからない…
人材育成がうまくいかない…
このような悩みを持つ経営者、人事責任者の方からの相談が近年増加傾向にあります。業務遂行に必要な能力・スキルをしっかりと見定め、社員に無駄なく成長を促していくことこそが現代ビジネスにおける人材教育の肝と言えます。
とはいえ、終身雇用制度が過去のものとなりつつある現代において、新卒から定年まで長いスパンで人材育成を考えることは現実的ではありません。
そこでお勧めしたいのが『スキルマップ』を用いたスキル管理方法です。スキルマップとは、従業員個々の役職や職歴に合わせて求めるスキルや、現在の業務内容に関するスキルレベルを可視化したものです。近年積極的に導入する企業が増えています。
今回は、社員の能力開発やモチベーション向上に寄与するスキルマップとは何か、またその作成方法等について解説します。
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『人材育成』という業務の役割・重要性を理解する
皆さんは、人材育成をどのように捉えているでしょうか。
入社した社員には、早く職場の環境に慣れてほしい、OJTで徐々に仕事を覚えてほしいと思うのは当然です。しかし、敢えていうならば、人材育成を単に新入社員を職場環境に慣れさせるものと考えるのはもったいないといえます。
会社とは人の集まりであり、社員一人ひとりの成長は会社の未来を左右しますので、「人材育成」は『企業の未来を育てる大切な業務』であることをまず念頭に置いてほしいと思います。
もし、育成に関する指針がなく、OJTで仕事を覚えさせる社員任せの育成方法を行なっている場合は早急に対策をするべきです。
人材育成でまず取り組むべきこと
では、本格的に人材育成をスタートさせるにあたり、最初に取り組むべきことは何でしょうか。
まずは以下の点を明確にしてみてください。
「自社で活躍する人」はどのような人か?
「活躍する人材」になるためには、どのようなスキルを身につければよいか?
これを人材育成の根本に常に置き、社員の教育、部下の教育にあたることが第一歩です。
人材育成で大切なのは社員、部下へしっかりと関与すること。
一昔前の「俺の背中を見て育て」といった指導方法は絶対にNGです。
この方法では
・計画的に人材を育てることができない。
・育成に時間がかかる。
・本当に成長しているか判断しにくい。
などデメリットが多いからです。
人材育成の基本は社員・部下としっかりコミュニケーションをとり、具体的に目指すべき指針を与え、成長をサポートすることにあると肝に銘じてください。
なぜ今、人材育成が注目されているのか
近年、人材育成が注目されている背景として、流動化が進む労働市場において効果的に労働力を確保していくことの重要性が高まっていることが挙げられます。
戦前・戦中に作られたという日本の終身雇用という慣行は終わりを告げつつあります。
厚生労働省職業安定局が発表したデータによると、1995年には6割強だった大卒の生え抜き社員の割合は、2016年には5割まで低下しています。また、企業側もIT化が進むビジネスシーンにおいて、より若くIT偏差値の高い社員を求め、日本経済の低迷が長く続いているといった背景から早期退職を募る企業も増加傾向にあります。
このように急速に変化する労働市場において、人材の成長を見える化し、効率的な育成計画を立てることは大変重要です。
一方で働く社員側としても、多様な経験ができ、スキルを高めることができる職場環境を企業に求める傾向があります。
「この会社では自分はもう成長できない、成長しているかわからない、成長しても評価されない」と感じられる職場環境では、有能な人材が流出する要因となってしまいます。
しかしながら、
・活躍するための道筋を社員、部下に示すことができていない
・求めるスキルが明確でないために、社員、部下の指導・教育の方法が分からない
・人材育成を進めたいが、何から始めて良いか分からない
・人材育成計画や仕組みがない
このような企業がまだまだ多いのが実情です。
そんな企業が人材育成においてまず取り組むべきものが「スキルマップ」であり、近年導入する企業が増えています。
スキルマップとは何か
スキルマップとは、従業員が業務を遂行するにあたって、必要な能力(=スキル)を年次や役職ごとにまとめたものを指します。
役員(取締役・執行役員)、一般管理職(部長・課長・係長)、一般社員など、会社におけるポジションごとにマネジメント、コミュニケーション、リーダーシップなどで求める能力(スキル)を一覧にしたものです。
各社員がスキルマップでどの段階にあるかは、1on1ミーティング(1対1面談)などで評価をフィードバックします。
スキルマップの効果・メリットとは
スキルマップを作成し、運用することの効果・メリットは以下の通りです。
① 社員一人ひとりの能力・スキルの可視化
社内のグループ、部門、個人単位で現状のスキルがどのレベルにあるかを把握することが可能です。
② 効率的な育成計画が立てられる
従業員の能力・技能、力量が正確に評価できれば、現状『不足しているスキル』も見える化されることになります。重点的に強化すべき能力が明らかになれば適切な教育計画を立てたり、研修制度を作ったりといった対策が可能です。
③ 人材を育成する負担の軽減
社員のスキルが可視化されることで、管理職は部下の育成がしやすくなります。また、個人は会社からどのような能力・スキルの習得が求められているかが明確に示されるため、目標を設定しやすく、早期の成長が期待されます。
④ 社員のモチベーション向上
自身のスキルレベル、今後の目標が明らかになることで仕事に対する意欲を高めることができます。
スキルマップの作成方法
では、スキルマップはどのように作成すれば良いのでしょうか。
ステップ1:人材育成方針、目指す人物像について決定
会社の求める「理想の従業員像」と実際の人材のギャップを埋めることが人材育成の基本です。各部門、グループ、個人に求める能力を明文化することから始めます。
ステップ2:階層の設定、階層ごとの役割の設定
役員、一般管理職、一般社員などの階層を決定し、それぞれの階層で求めるスキルを設定します。
ステップ3:一般スキル項目の設定、階層に応じてスキル内容を割り当て
部門による専門性の高い項目ではなく、全社員共通の一般スキルから設定します。スキルの項目を細分化し過ぎないことがポイントです。
ステップ4:部門ごとに専門スキル項目の設定、階層に応じてスキル内容を割り当て
一般スキル項目が決まったら部門ごと、専門性の高いスキル項目の設定に取り掛かります。専門スキルに関しては経営層や人事担当者では把握できないものも多いため、目的に応じて部門管理者など経験値の豊富な重要人物を巻き込んで作成します。
ステップ5:スキルマップのまとめ、チェック
完成したスキルマップに問題がないかを確認し、運用を開始します。最終的にはスキルマップの評価を人事評価に紐付けて昇給や昇進の判断ツールとして活用します。
同じ業種、業界であっても会社が違えば、求める理想像も異なります。
自社のビジョン、経営理念から一貫性のある理想の従業員像を導き出し、人材育成を行うためのツールがスキルマップです。
そのため、スキルマップは他社を真似ても全く意味がないので注意してください。
スキルマップの活用方法、進め方
最後に、スキルマップの活用方法について解説します。
スキルマップの運用は以下の手順で進めるのが基本です。
① 現在のスキル把握・評価
1on1ミーティングなどを実施し、部下の持つスキルの現状把握を行います。現状身につけているスキル、不足しているスキルを上司と部下、双方が確認します。
1on1ミーティングの詳細については、以下のブログもぜひご覧ください。
https://toma.co.jp/hataken/hataken/1on1-meeting-points/
② 目標設定
1on1ミーティングでは、満たしているスキルへの評価をすると共に、不足しているスキルの強化に向けて目標設定を行います。
具体的なアクションプランを決めてあげると部下のモチベーションアップに効果的です。
③ 研修・指導・実践
確認したスキルを習得するために通常業務に従事します。スキル内容によっては研修やセミナーを受講することも効果的です。1on1ミーティングのたびに現状把握、再評価を行い更なるレベルアップを目指します。
TOMAのスキルマップ作成サービス
TOMAではスキルマップを作成したい企業に向けたサービスを展開しています。
作成のメンバー決定から階層設定、専門スキル項目の設定まで一貫したサポートが特徴です。初めてスキルマップに取り組む際にはぜひ一度ご相談ください。
今回紹介したスキルマップ作成サービスの詳細はこちらになります。
また、TOMAでは定期的に人材開発・組織開発に関するメールマガジンを配信しております。こちらもぜひご登録ください。
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著者情報
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント
市丸 純子
2013年TOMAコンサルタンツグループ入社。現在はグループ内の長期ビジョン実現に向けた特別プロジェクトのマネージャーを務め、自社内の組織開発・人材開発に携わる。また、その経験を活かし、「100年企業を創る」をモットーに、多くの中小企業に向けて人材開発コンサルティングを提供している。