2023年5月2日

組織の風通しを良くする5つのポイントを解説します

組織開発

会社は順調に成長してきたものの、成長の踊り場から長い間抜け出せない…
組織が大きくなり、管理者である自分の目が届かなくなってきた…

組織を運営するうえで、このような悩みを抱えている経営者や管理職の方は多いことと思います。もちろん最初から完璧な組織などなく、またどの組織でも成長過程で何かしらの課題が表出するものです。

冒頭のようなお悩みを生む組織の課題のひとつとして「風通しの悪さ」が挙げられます。

社員が成長し、能力を発揮すること、また外部環境に対応して会社が成長するためには、風通しのよい組織作りという環境整備が欠かせません。今回のブログでは、そうした「風通しの悪い組織」が生まれる理由や、組織の風通しを良くするために何をしたらよいのかを解説します。

 

組織運営に課題を持つ会社に共通している「風通しの悪さ」

当社では組織開発、人材開発のコンサルティングを行っていますが、会社が抱える課題は概ね共通していることが分かります。あなたの会社では、次のようなお悩みはありませんか?

・管理職と部下のコミュニケーションが十分でない
・社員に活気がない
・社員から業務改善の提案が上がってこない
・社員から提案が上がってきても検討・対応する人がいない
・陰で不満を言う人が多い
・役員会の意見交換、施策の議論が活発でない
・社員の定着率が悪い

このような課題がある組織には共通して、社内の風通しが悪い傾向が強いです。
風通しが悪いことで、さらに社員のコミュニケーションは不活発となり、改善提案はされず変化のない組織となります。社員の会社への愛着心(エンゲージメント)も低下します。

結果として、社員は閉塞感を感じ、やる気がある社員が離職する、という負のスパイラルに陥ります。

なお、風通しの悪い職場とは、一般的には上下関係が強すぎたり組織間の壁が厚いことで従業員同士のコミュニケーションが十分になされず、情報が特定の人物や上層部のみに集中する組織を指すことが多いです。

そうした組織では、会社としての経営方針・意思決定が組織内に十分に浸透しなかったり、部下からの自由な提案がなされない等々、組織の成長を阻害する様々な弊害が見られます。

風通しの悪い組織の所属社員の多くは、居心地の悪さとの葛藤が絶えず、本来の能力を発揮できません。

 

風通しが悪い組織は、なぜ生まれるのか?

では、なぜこのような組織風土が出来上がるのでしょうか。考えられる原因は一つではないことが多く、また複数の原因が複雑にからみ合っています。

以下の項目について、あなたの組織で思い当たる点はありませんか?

①経営者がワンマンで周囲の意見を聞かない
②会社の5年後、10年後を見据えたビジョンがない
③社員をコストと考えており、資産であるという意識がない
④社員を育成する仕組みがない
⑤社員の意見を吸い上げる仕組みがない
⑥経営者と社員の信頼関係が希薄
⑦上司と部下との信頼関係が希薄

以下、一つ一つ解説していきます。

 

①経営者がワンマンで周囲の意見を聞かない

ワンマン経営者はその強烈なリーダーシップで迅速・効果的に施策を進めることができたり、また、そのカリスマ性のもとに優秀な社員や取引先が集まるというメリットがあります。一方、役員や社員の声に耳を傾けない、或いは、過去の成功体験に固執し新たな取り組みに対して消極的というデメリットもあります。

こうした経営者のもとでは、その下の役員や社員も同じように振る舞いますので、ボトムアップでの新しい意見などが出づらく、決められたことだけを淡々と行うことが当たり前の組織になっていきます。そのような組織では当然ながら自由闊達な意見が生まれず、風通しが悪くなり、居心地が悪くなっていきます。

 

②会社の5年後、10年後を見据えたビジョンがない

従来通りの経営を行うことで安定的な売上・利益が確保でき、また過去の成功体験に囚われて新しいチャレンジへの意識が低い会社があります。しかし、商品・サービス・営業・組織・人材育成など何も見直さず10年後を迎えたとき、その会社は生き残れるでしょうか?

世界情勢が刻々と変わり、ChatGPTのような業界環境を一新しかねない技術革新も続々と生まれる中、そのような姿勢では会社としての生き残りも困難です。また、変化がない会社は高い能力を持つ社員にとっては成長の機会がなく、仕事のやり甲斐や面白さも見出しづらく魅力が低く映るでしょう。

外部環境の変化が激しい今だからこそ、5年後・10年後の「ビジョン」を提示し確実な実行が不可欠です。現状維持の危機感、未来へのチャレンジ精神がない限り、社員の閉塞感も蓄積する一方だと思います。

変わろうとしない会社は、改善の意識が低く、新たな意見を取り入れる風土もないため風通しが悪くなります。

 

③社員をコストと考えており、資産であるという意識がない

労働人口があふれ、人材採用に困らない「買い手市場」は過去のものになりました。人手不足の中、集めた人材をどう育成し活躍してもらうか、そのキャリアにどう寄り添うか。社員を「人的資本(資産)」と捉え、人件費を「コスト」ではなく「投資」と考えなければ、社員の定着率は改善しません。

社員を資産と考えない会社は、社員の育成に関する意識が低く、社員のキャリア形成にも無関心なことが多いです。社員の視点からは「使い捨てされている」と感じます。

そうした会社では、社員の個性を尊重し、社員の声に耳を傾ける文化が根付いていないため、やはり組織の風通しは悪くなります。また、社員の会社に対する愛着心も育ちにくく、自分の成長を実感することも難しいため、早期離職が多い傾向があります。

 

➃社員を育成する仕組みがない

入社した社員の戦力化には、それぞれのキャリア形成のための計画的育成が不可欠ですが「社員(人材)=資産」の意識がない会社は、そもそもそうした育成計画がない場合が多いです。その会社の役員、管理職にあたる年代の方も当然、計画的に育成されたという経験がないため、部下の育成を自らの業務と認識していないかもしれません。

部下の育成において、定期的な面談によるコミュニケーション(最近は「1on1」や「1対1面談」として注目されています)が必要ですが、育成の仕組みがない会社では、そうした適切な1on1ミーティングも行われない傾向があります。

このような会社では、上司が部下に何を話していいのか分からなかったり、上司が一方的に業務指示をして終わってしまうような誤った1on1ミーティングを行ってしまうことも多いようです。そのような1on1ミーティングは逆効果です。

育成の仕組みがないことで、社員自身も自らの目指すキャリアの方向性がわからず、成長に向けた行動も控えるようになります。また上司からの適切なアドバイスやフィードバックもされないため、必要なコミュニケーションが生まれません。

結果として活発なコミュニケーション、意見交換がされない組織となり、風通しの悪い組織ができあがります。

 

⑤社員の意見を吸い上げる仕組みがない

社員は快適にワクワク働き、その結果として、自分やチームの成長を望んでいます。「もっとこうしたらいいのに」という改善提案は自分のみならずチーム・会社のためでもあります。そうした声を吸い上げる仕組みがないと、社員は「この会社は何も変えようとしないんだな」と考えます。

また社歴の長い社員・管理職は社員の不満要素や会社の改善点が見えなくなります。そして離職する社員はその理由を正直に言うとは限りません。結果、適切な改善施策を実行できず、他の社員も同様に黙って辞めていく、という流れができあがります。

さらに、社員の意見を吸い上げる仕組みがない会社の傾向として、新たな意見を言うことを歓迎しないケースが多く見られます。社員としては、未来のための意見、よりよくするための意見を発言しても無駄だと感じ、結果として活発な発言をしなくなり、風通しの悪い組織ができあがります。

 

⑥経営者(社長)と役員または社員との信頼関係が希薄

経営者(社長)と役員の信頼関係が築かれていない組織も当然、風通しが悪くなります。トップ層がそうなると、当然、その下の階層、役員⇔管理職、経営者⇔管理職の信頼関係も構築されません。

経営者(社長)と役員の信頼関係が無いと、役員は意見を上申することをためらい、結果、経営者が正確な経営判断を下すための情報収集が不十分になり、最善の選択肢を認識することすらできなくなります。

そうした会社では社員が経営者を信じることができなくなります。信じることができない経営者に誰がついていくのでしょうか。不満要素が経営者であることも社内では口にしづらく、他の魅力的な会社に目が行ってしまいます。

また、役員同士の信頼関係がない場合、役員間の風通しが悪くなり、その雰囲気が会社全体に蔓延することになります。

 

⑦上司と部下との信頼関係が希薄

「自分が何か失敗をしても、最後は上司が自分の見方になってくれる」と社員が考えられない組織は、上司と部下の信頼関係がありません。このような組織は、減点方式で社員を評価したり、発言の一言一句を指摘したり、個人の失敗をとがめるようなことをします。

失敗したときは、会社がどう対応し、今後の再発防止のために何をすべきか、ということを組織として考えることが必要です。しかし、個人に責任を押し付けようとする、上司が自分の責任を逃れようとすることで一気に上司部下との信頼関係は崩壊します。

また、上司の部下に対する心配りや成長を促すためのアプロ―チがなければ部下は上司を信頼しませんし、信頼しない上司には本音を言いません。
本音を言いたくない、言えない組織は風通しが悪くなります。

 

組織の風通しを良くするために取り組みたい5つの解決策

上記のような課題がある会社は、複数の課題が複雑に絡み合っているケースが多く見受けられます。したがって、施策を実行する際は何か1つを行えばすべてが解決するというものではありません。また会社の風土に合わない施策をがんばって実施しても、なかなか効果はでません。

会社の風土に合った施策を複数個、優先順位をつけて行うようにしましょう。

また、今月この施策を行ったから、来月組織が変わる、という即効性のある施策はありません。まずは3年をめどに着実に行うようにしましょう。

いま、何も行わなければ組織は変わらず、風通しは悪化する一方です。何かを変えたいと感じた今、できることから少しづつ始めてみましょう。

ここでは、具体的な解決策を5つご紹介します。

 

①5年後、10年後のビジョン(目指す姿)を作成する

会社の5年後、または10年後のビジョンを掲げましょう。ビジョンを作成する際は、トップダウン型とボトムアップ型を融合した作成方法がおすすめです。作成の過程からビジョンの浸透を図ることができます。

社員が未来の姿を想像できるビジョン、役員が未来のための施策を検討できるビジョンを作成しましょう。

 

②ビジョン達成のための取り組みを検討し、実行する

作成したビジョンを掲げて終わりではなく、その姿を実現するためにどのようなことが必要か、取り組みを検討して実行しましょう。取り組み内容に応じて、プロジェクト型で行うか、経営者主導型で行うか、振り分けをするのもいいでしょう。

掲げたビジョンは、会社と社員やお客様とのお約束事です。約束が果たせるよう必ず取り組みを進めましょう。

未来に向けて動き出す会社は、社員の新たなアイデアも受け入れる必要が出てきますので、活発な意見交換が生じ、風通しも改善されます。

 

③人材育成方針を策定する

人材育成方針がない会社は、早急に作成しましょう。会社としてどのような方針で人材育成を進めるのか、という軸がないと、管理職の属人的な感覚に任せた、統一性のない育成となります。

また、ビジョンを作成した場合は、そのビジョン達成のために必要な人材育成方針を作成するといいでしょう。

 

➃従業員満足度調査を実施する

社員がどのようなことに不満を感じているのか、集合体としての傾向を確認するために、半年に1回程度、従業員満足度調査を行いましょう。

そのうえで、取り組むべき施策の重要性、優先順位を決めます。調査を行わずに施策を決定すると、本来の課題とずれた、独りよがりな施策となり、効果的ではありません。

また、上司と部下との関係性構築が十分でない会社は、1か月に1度程度のパルスサーベイも併用するといいでしょう。部下の様子を定点観測することにも役立ちます。

 

⑤適切な1on1ミーティングを実施する

ビジョンや人材育成方針を踏まえて、定期的な1on1ミーティングを実施しましょう。1on1ミーティングは半年に一度行う評価面談ではありません。部下の日々の業務を承認し、明日からの行動を示す時間です。上司と部下との信頼関係構築にも役立ちます。

ただし、適切な方法で行わないとかえって逆効果となることもあります。1on1ミーティングに慣れていない方は、研修を受けるなどしてスキルを身につけることも必要です。

 

組織全体で課題を認識し、覚悟をもって長期的に取り組む

これらの施策は、だれか一人が個人的に行っても効果がでません。組織として意思決定をし、組織全体で取り組むべきものです。組織の課題は組織が一丸とならなければ解決されません。

組織全体で課題を認識し、覚悟を決めて取り組むことが最大のポイントです。

またこのような施策を行ったとしても、一朝一夕に効果が出るものではありません。長期的な取り組みであることを認識したうえで開始しましょう。

 

組織の課題解決を実現するTOMAのサポート

TOMAコンサルタンツグループでは、このような課題を抱える会社に対して、社員の皆さんとともに、複数の取り組みを複合して行うサポートを行っています。

また、自社内からそうした組織改善のムーブメントを起こすことが難しい状況もあると思います。そうした場合、外部の力を借りてそうした流れを生み出していくことも一つの方法です。

①TOMAが行う施策の例

風通しが悪い会社に対するTOMAのサポートは、以下のようなものが挙げられます。会社の実態やニーズに応じて、他のサポートも行っております。

・従業員満足度調査
・社員への個別ヒアリング
・経営理念、社是の見直し
・ビジョンの作成
・管理職向け研修(1on1ミーティング、考課者研修など)
・管理職向け1on1ミーティング個別サポート
・インナーブランディング
・スキルマップ作成
・社内コミュニケーション活性化プロジェクトの立ち上げ支援
(社内報、サンクスカード、表彰制度、改善提案制度など)

 

②TOMAのコンサルティングの流れ

(1)従業員満足度調査を実施する
従業員満足度調査で、社員が感じる不満などの傾向を把握します。

(2)従業員のみなさんに個別ヒアリングを行う
上司に本音を言えない従業員が多い場合、満足度調査で正直な回答がされないこともあります。風通しが悪い会社では、TOMAのコンサルタントが直接従業員にヒアリングをして生の声から情報を収集します。

(3)必要な施策の決定、施策実行のスケジュール案の決定
調査とヒアリング結果をもとに、必要な施策をご提案します。また重要度、優先順位に合わせて、実行のスケジュール案をご提示します。もちろん、会社の方と相談の上決定します。

(4)各施策の実行
基本的にTOMAのコンサルタントが主導する形で施策を行います。
ただし、施策の内容によって、会社の担当者の方にご協力いただいたり、社内にプロジェクトを立ち上げ、プロジェクトメンバーと行ったりすることもあります。各施策で求める効果に応じて、関与者、関与の仕方、進め方を決定します。

(5)半年ごとの従業員満足度調査と個別ヒアリングの実施
半年ごとに調査とヒアリングを行うことで、社員の変化を確認します。

 

チェックリストで自社の状況を確認してみませんか?

まずは、こちらのチェックリストで、貴社の状況をチェックしてみましょう。チェックリストに回答いただいた方には、最優先で行うべき施策がわかる無料診断レポートを提供します。

今回のブログでご説明した内容は組織が抱える課題のほんの一部です。「風通しが悪い」といっても組織によってどのように風通しが悪いのかは異なります。

現状に目を向け、正しい改善策を確実に取り組んでいきましょう。

―――

<参考書籍のご紹介>

『部下とは15分だけ話しなさい!』(藤間 秋男刊/水王舎) 

会社にとって従業員は、実はお客様より大事です。
従業員を大切にしない会社、経営者が独善でワンマン経営を続けている会社は、組織の力を発揮できません。時代の変化についていけません。やがて取り残されていく、そういう運命にあります。もしもあなたの会社が、一人の経営者の強いリーダーシップで動いているなら、ぜひこのことを振り返り、自問してほしいのです。(「はじめに」より抜粋)

40年以上、2,500社以上の中小企業のコンサルティングを成功させてきたTOМAコンサルタンツグループ藤間秋男会長が自らの経験を通じて得た「社員を喜ばせる経営」の方法、経営理念のつくり方、理念の浸透の方法、社内での仕組みづくりを本書でお伝えしています。これらを本気で実践しさえすれば、会社は永続的に社会から求められる存在になれます!

【目次】
プロローグ 「社員を喜ばせる経営」を始めよう
第1章 「社員を喜ばせる経営」を実践すれば、会社は面白いように伸びる
第2章 ホンモノの経営理念をつくる
第3章 経営理念はすべての社員に浸透させてこそ輝く
第4章 経営理念を社員に浸透させたら「信じて・任せる」
第5章 今日から「100年企業」になる、そのための経営
エピローグ 社員に惚れられる経営者たれ

『部下とは15分だけ話しなさい!』(藤間 秋男刊/水王舎) 

 

著者情報

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント

市丸 純子

2013年TOMAコンサルタンツグループ入社。現在はグループ内の長期ビジョン実現に向けた特別プロジェクトのマネージャーを務め、自社内の組織開発・人材開発に携わる。また、その経験を活かし、「100年企業を創る」をモットーに、多くの中小企業に向けて人材開発コンサルティングを提供している。

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