2021年11月27日

従業員満足度調査を定着率アップに活用しよう!

働き方改革 組織開発

皆様の会社は、従業員満足度調査やアンケートを行っているでしょうか。従業員の意見を会社の雇用管理改善に活かすために、多くの企業が従業員満足度調査を行っています。一方で、調査やアンケートは行っているものの、「調査結果の分析まではできていない」、「悪い結果に対して改善するための取り組みが十分にできていない」というような、「やりっぱなし状態」になってはいないでしょうか。

今回は、そんな従業員満足度調査の結果を意味のあるものにするために、上手に活用する方法についてご紹介します。

従業員満足度調査とは?

従業員満足度調査とは、従業員が会社の経営方針、人間関係、自身の仕事内容などについて、どの程度満足しているかをアンケートで測るものです。アンケートの形式は、質問に対して「はい/いいえ」で答えるチェックリスト形式のものや5段階評価をするもの、また自由記載のものまで様々です。

現在、多くの中小企業は優秀な人材の採用、採用した人材の定着・戦力化の問題に悩んでいます。そのため、従業員のモチベーションアップや人材定着、業績向上を目指すために、従業員満足度調査を活かし、働きやすい職場作りを目指そうとする企業が増えています。

厚労省は、平成25年発表のレポートにおいて、従業員の「働きがい」や「働きやすさ」の意識を高めると、働く意欲が向上し、職場での定着率が上がり、さらには会社の業績向上に効果があることを示しています。

(下表)「働きがい」「働きやすさ」の効果

出典:厚生労働省(2013).「職場の働きやすさ・働きがいに関するアンケート調査(従業員調査)


従業員満足度調査による効果

従業員満足度調査を行うことによる効果は、3つあります。

 

1)会社の課題をあぶりだすことができる

社長や人事担当者が感じている会社の課題と現場の従業員が感じる課題は、ズレていることがあります。そのため、雇用管理改善の取り組みを考える際は、社長や人事担当者だけで考えるのではく、現場の意見を吸い上げ、その課題に対する解決策を考えることが重要です。このことは会社の取り組みに対する従業員の納得度を高める効果も考えられます。

 

2)突然の退職(びっくり退職)を防ぐことができる

忙しい職場ほど、従業員が上司とじっくり本音を話す機会は少なくなります。そのため、ある日突然退職希望を出される「びっくり退職」が発生してしまいます。これに対して、従業員満足度調査のデータをもとに定期的な調査を行うことで、従業員一人一人のモチベーション低下や職場への不満などの退職の兆候を知ることができます。

 

3)会社の取り組みによる効果を検証することができる

雇用管理改善の取り組みを行う際は、その取り組みに対してきちんと効果が出たのか検証し、改善が必要な場合は、改善計画を立てることでより良い取り組みに仕上がります。そのために、新しい取り組みを運用した際は、従業員の声を聴くために調査を行うことがあります。


従業員満足度調査がやりっぱなしになってしまう原因

このような効果があるにも関わらず、調査がやりっぱなしになってしまう原因は何でしょうか。

 

1)課題が整理し切れていない・・・

従業員からの意見を取集したものの、様々な課題が噴出していまい、何から手を付けていいか分からないままになっていることがあります。

 

2)課題に対する解決策として、何をすればいいか分からない・・・

課題が分かっても、その解決策としてどのようなものがあるか知らない人事担当者が多く、具体的な行動に落とし込めないことがあります。また、新たな取り組みをやったところで解決に進まなければ、さらなる不満の増加に繋がりかねないと思い、なかなか一歩を踏み出すことができないといったことが起ってしまいがちです。

 

3)そもそも、従業員から愚痴や不満ばかりが集まってしまった・・・

アンケートの設問設計で回答の想定ができていない場合や自由記載ばかりの設問を作ってしまった場合、このようなことが起こりやすいです。具体的な不満の解消が難しい意見が集まってしまうと、対応することがとても大変になり、臭いものに蓋をする形になってしまうことが多いです。

 

このようなことが原因で従業員満足度調査が、やりっぱなしになってしまうことが考えられます。


従業員満足度調査の活用の方法

では、従業員満足度調査をやりっぱなしにしないために、どのように活用すればよいでしょうか。活用のステップは、3つです。

1)課題の整理をする!

調査の結果を課題ごとに整理します。まとめる課題の項目例は、大きく分けて10項目です。「組織目標」「職場風土」「上司」「コミュニケーション」「能力開発」「仕事の進め方」「人事考課」「給与」「労働環境」「勤労意欲」です。

 

2)課題に対して優先順位をつける!

整理した課題を「重要性」と「緊要性」の2点から優先順位を付けます。これにより、今すぐ手を付けなければいけない課題が明確になります。

 

3)課題に対する解決策を考える!

課題を解決するための仕組みや取り組みを考えます。以下に解決策の例を記載しました。

 

例1)上司とのコミュニケーションに課題がある会社の場合
上司が忙しすぎて、部下とのコミュニケーションをとる時間が少なく、良い関係性が築けていないことが調査から分かった。解決策として、全社で1on1を上司と部下で月1回行うことを開始した。それに伴い、上司側に1on1の研修を受講してもらい、正しいやり方を身に着けてもらった。また、上司との人間関係を築くことが困難と思われる場合は、部署異動を行った。

例2)ペーパーレスが進んでおらず非効率的な仕事の進め方に課題がある会社の場合
紙での事務処理が多いことで、在宅勤務が進まないことや作業が非効率的になっていることが調査によって分かった。経営層は、「従業員は紙作業に馴染んでおり、このままのやり方を変えない方がいい」と思っていたが、調査結果により全社的なペーパーレスに取り組むことを決断した。業務システムを導入し、社内の申請ワークフローや文書申請などをクラウド上に整備した。

また、その他の取り組み例としては以下のようなものがあります。

【職場の課題に対する取り組み例】
・クレド導入・浸透
・新入社員のオンボーディング
・スキルマップの作成
・キャリア申告書の作成
・人事制度の見直し(等級・評価・給与)
・上司と部下の1on1
・管理職研修の実施
・業務システムの導入
・業務・連絡フローの改善


従業員満足度調査の活用のポイント

従業員満足度調査を活用する上で、気を付けるべきポイントがあります。

ポイント ① 従業員への説明をする機会を作る

従業員満足度調査の結果からの取り組みであることを説明した上で、新たな取り組みを始めましょう。このことにより、従業員からの取り組みに対する納得感を作ることができます。

ポイント ② 課題を解決する取り組みを行う

課題を整理し効果的な解決方法を考えましょう。従業員満足度調査で職場の課題を明確にし、整理した上で人事施策を考えることで、効果的な取り組みになります。

ポイント ③ 調査結果と社長の認識にギャップがあるところは要注意!

調査の結果と社長の認識にギャップがあったところは、特に重点的に考えましょう。ギャップがあったところはトップと現場との認識にズレがあった所と言えます。そういったところは、会社の対応も手薄になってしまうことが多いため、特に気を付けてフォローをしましょう。

以上のポイントに気を付けて従業員満足度調査を活用し、働きやすい職場をつくりましょう。

著者情報

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント

市丸 純子

2013年TOMAコンサルタンツグループ入社。現在はグループ内の長期ビジョン実現に向けた特別プロジェクトのマネージャーを務め、自社内の組織開発・人材開発に携わる。また、その経験を活かし、「100年企業を創る」をモットーに、多くの中小企業に向けて人材開発コンサルティングを提供している。

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