2025年1月9日

経営力が向上する自律型組織の作り方 ~権限移譲で社長の「孤軍奮闘の経営」から脱却しよう~

組織開発

日々身を粉にして頑張っていても、なかなか思い通りの経営ができていない…そんな思いを抱えている中小企業経営者の方の声をよくお聞きします。

中小企業は人材の不足により業務が属人化し、特に、社長に権限も業務も集中するケースがよく見られます。そうした孤軍奮闘の経営から脱却し、社長の志を共有してくれる社員が自律的に活躍する組織をつくるにはどうしたらよいか-

今回のブログでは、実際にTOMAに多く寄せられる相談を紹介しながら、会社が成長するために必要な組織づくりのポイントを解説します。

社長だけが頑張る会社には限界がある

現在、中小企業をはじめとする日本企業は急激な為替変動や原価高騰のほか、人口減少による人材不足、更には若手社員の離職増加など様々な課題に直面しています。

予測困難で対処が難しい変化の中で会社を成長させるには、人と組織に着目した戦略に基づいた経営が必要です。

事業規模の拡大を目指して孤軍奮闘されている社長も多くいらっしゃると思います。しかしながら、一人で頑張るのには限界があります。社長と志を共有してくれる多くの社員の存在が、組織を結束させ、規模拡大の原動力になります。

 

 

社長が孤軍奮闘しなくても自律的に成長できる組織をつくるにはどうすればよいか…以下、TOMAが中小企業の経営者の方からよく受ける相談を紹介しながら、自律型組織のつくり方を解説していきます。

社長が忙しすぎて社員とコミュニケーションが取れない

経営企画、営業、経理総務まで全て社長が関わっていて、とにかく忙しく、社員とコミュニケーションが取れていないというケースをよくお見かけします。

社員と定期的に話をしている場合でも、社長の権限が強すぎて一方的なコミュニケーションになり建設的な話し合いができていない、社員が委縮してしまうといったことがあります。

正しい意思疎通が取れていない会社では、社長の目指す方向性が共有されていないことで、社長と社員の間にズレが生じ、結果として社員が会社に不信感を抱いてしまいます。

 

社員とのコミュニケーションに関する参考ブログ:
【1on1進行シート】がダウンロードできます! 失敗しない1on1の進め方
【テンプレートあり】やる意味のない1対1面談はもう終わり!目的・進め方・失敗しないポイントを大公開!

 

権限の委譲がうまくいかない

社長の孤軍奮闘経営をなんとかしたいと思っても、うまく権限移譲できないというご相談もよくお聞きします。

人材不足を補うため家族に仕事を手伝ってもらっている場合などは、そもそも役職を担うだけの経験や能力が無いこともあります。

また、社長がこれまで一人で頑張ってきた仕事のやり方に強いこだわりがある、経営を続けてきた苦労と自信から自分にも他人にも厳しくなってしまうといった場合も、権限委譲が進みません。

社員に権限を委譲する場合に大切なのは、役割や業務の明確化、それに伴う人材育成です。社員一人ひとりにどんな業務をしてもらうかを明らかにすることで、社員は業務に集中することができます。

また、やることがはっきりとしていれば、どんな技術を身につければ良いかもわかるため、効率的に社員を育てることができます。

 

社長に頼らなくても成果を上げられる自律型組織を作るには

会社は成長するにつれて経営の目的、利益の概念が変化していきます。

社員が20人程度の規模の会社は「家業的企業」から「企業」に移行する時期であり、経営の目的が「持続的な成長と企業価値の向上」となります。

 

 

では、会社が大きく成長するためには、どのような組織づくりをしていくべきでしょうか。

理想1.社長の意向がスムーズに伝わる一体感があるチーム

社員が20人程度であれば、社長が全員と定期的にコミュニケーションをとることも可能ですが、社員が40、50、100人と増えていくと、なかなか全員と話をする機会は設けられません。

直接話をしなくても社長の思いや経営方針がスムーズに伝わるような仕組みを用意し、常に一体感が感じられる組織になることが理想です。

理想2.社員が権限を持ち自律的に行動し、社長が本来業務に集中している

社長の本来業務以外の権限を少しずつ社員に委譲します。社長はいわゆる『現場』の業務から離れることで、会社の将来への投資や危機への備えといった『社長業』に集中することができます。

理想3.会社の成長の絵が具体的に描けている

社長業としてまず取り組むべき仕事の一つが会社のビジョンを描くことです。

長期的に成長を続けていくために何に取り組むか、〇年後(例えば3年後や10年後など)にはどのような会社でありたいかを、製品・サービスや顧客、人材などの面から具体的に検討します。

 

 

会社を成長させる組織づくりの5大要素

理想の組織をつくるためには以下の手順で進めていきます。

①目的の設定

・経営理念とビジョンの明確化

②目標の設定

・未来組織図の作成
・理想組織の実現のための構想(中期計画の策定)

③機能する組織づくり

・人材の配置・役割分担の明確化
・社内コミュニケーション体系の明確化
・社員教育体系の明確化

以上が組織づくりの基本視点です。これらの準備が整ったら人事評価制度を構築することや、非金銭インセンティブを導入するといった「組織の活性化」、または、会社に必要な人材の「採用活動」に取り組んでいきます。

 

 

では、理想の組織をつくる5つのポイントを具体的に解説します。

ポイント① 経営理念とビジョンの整理

経営理念とビジョンは経営における道しるべです。

経営理念は会社の存在意義であり経営の軸となるものです。ビジョンはミッションを達成した姿を具体的に表したものです。

「世界中のお客様に笑顔を届ける」が経営理念であれば、「販促ルートを世界に作る」「海外に拠点を設ける」がビジョンになります。

バリューはミッション・ビジョンを実現するための社員一人ひとりの行動指針です。

経営理念とビジョンは社内だけでなく、社外に対しても自社の存在意義をアピールする手段にもなり、ステークホルダーとの関係を良好にすることや採用活動においても自社に合う人材を集めることに役立ちます。

「経営理念とビジョンは大企業が掲げるもの」と考えている人も多いですが、そんなことはありません。数千人から数万人の社員の心を一つにするのと、20人前後の社員の心を一つにするのはどちらが容易でしょうか。小規模な会社こそ、明確な経営理念とビジョンを立ち上げることが大切です。

経営理念とミッション・ビジョンの違いについて説明したブログもありますのでもしよければお読みください。「ビジョン経営が“社員のやる気”を育てる! 〜ビジョンとは何か?経営理念・ミッションとの違いをわかりやすく解説〜」

ポイント② 未来組織図の作成

未来組織図とは、将来の理想の組織図です。将来の組織の形や役割を明確にすることで、いま必要な人材育成や採用施策が具体的になっていきます。

また、誰がいつまでに、どのような手段を使って、理想の組織を実現するための施策を行うか、中期計画にまとめるのも良いでしょう。

 

 

ポイント③ 社員の配置・役割分担の明確化

社員の配置・役割分担を明確にすることで配属された現場で社員が何に全力を尽くせば良いかが明確になります。

中小企業では、特に社員の役割が明確でなかったり、不必要に重複していたり、やることがコロコロ変わることがよくあります。

社員の配置・役割分担を明確にすることでこれらの課題を解決できます。「組織図」と「役割分担表」や「権限表」を作成し、定期的に見直すと、運用をスムーズに行うことができます。

ポイント④ コミュニケーション体系の明確化

中小企業では、会議体系が確立していないケースが少なくありません。会議は社員同士が有用な意見を交わし合える絶好のコミュニケーションの場です。必要なコミュニケーションが不足すると機会損失の発生や組織の沈滞化の可能性が高まります。

全社員が集まって共有する場、一部の社員で議論する場、業務の個別指導をする場など、必要なコミュニケーションの場を設け、体系化することで組織を強くすることができます。

社員とのコミュニケーションに関する参考ブログ:
【1on1進行シート】がダウンロードできます! 失敗しない1on1の進め方
【テンプレートあり】やる意味のない1対1面談はもう終わり!目的・進め方・失敗しないポイントを大公開!

 

 

ポイント⑤ 社員教育体系の明確化

新入社員の育成に対する投資や取り組みは、大企業と中小企業で大きく異なります。中小企業は人材不足の状況からも最速で成長することが求められるにもかかわらず、大企業と比べて体系的な社員教育体系が十分ではないことが多いです。

業務に必要な知識を明らかにし、研修で学ぶOFF-JT(オフ・ジョブ・トレーニング)と業務の中で学ぶOJT(オン・ジョブ・トレーニング)を組み合わせることで、人材育成の取り組みの効果を最大限に発揮することができます。

 

 

組織づくりに迷ったら、TOMAが全力サポート!

ただでさえ忙しい現状において、組織づくりを一から学び、作り上げるのは大変です。そんな時は、組織づくりの課題解決に長けたプロフェッショナルに思い切って頼ることも一つの手段です。

TOMAでは人材育成・組織開発の支援を行っています。経験豊富なコンサルタントが専門的なノウハウを提供し、社長の一番の相談相手になり、1社1社の課題に合わせたサポートを行います。組織づくりに迷ったらお気軽にお問い合わせください

こうした情報を定期的に発信しているメルマガもありますので是非ご登録ください

著者情報

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役専務<br />
ビジネスサポート部 部長 税理士・行政書士

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役専務
ビジネスサポート部 部長 税理士・行政書士

陣内 正吾

人材開発・組織開発のみならず、事業承継や税務も含め多くの中堅・中小企業へのコンサルティングサービスを推進。TOMAのビジョン浸透のため2018年に10年後の自社の未来を考える全社プロジェクト「SHIFT TEAM」を発足させるなど、社内の組織改革を率いる。

戻る