『十年一昔』ということわざがありますが、テレビ離れが進み、各個人がそれぞれの趣味嗜好に合わせて余暇を過ごす時代、価値観の多様化は加速度的に進んでいます。
若手社員との世代間ギャップに悩む管理職、ベテラン社員は昔から多いですが、近年はさらに状況が複雑化しているようです。
転職しながらキャリアアップを目指す人材が増えている昨今、若手社員の心を掴み会社への帰属意識を高めるには、これまで以上に工夫と努力を要します。
今回はZ世代と呼ばれる若手社員が企業選びで重視しているポイントは何か、どんな取り組みが効果的かを解説したいと思います。
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そもそもZ世代とは?
「Z世代」という言葉はアメリカで、1960年から70年に生まれた人を指す「ジェネレーションX」という言葉に由来します。
明確な線引きがあるわけではありませんが、インターネットが普及する少し前、1980年代序盤から1990年代中盤までに生まれた世代を「ジェネレーションY(Y世代)」と呼びます。
Z世代はその次、1990年半ばから2010年代に生まれた世代のことです。
2022年の現在から逆算すると、10代から20代前半の若者がZ世代にあたるため、4・5年前から就職市場でもZ世代という言葉が注目されるようになっています。
Z世代の特徴とは?
では、Z世代とはどんな環境で生まれ育ち、どんな価値観を持っている人が多いのでしょうか?
特徴① デジタルネイティブ
まず、Z世代は生まれた時から周りにインターネット環境やデジタルデバイスが備わっていた世代です。
そのため自分の体の一部のようにデジタル機器を使いこなしている人が多い傾向にあります。
また、インターネットを通し、世界中のさまざま情報に触れる機会が多く、多様な価値観を持つ人が多いのも特徴です。
特徴② 社会問題への関心が高い
次に、SDGsに代表されるような環境問題を学校で学んでいる世代です。
幼少期に東日本大震災を経験しているため、社会問題への関心や社会に対する貢献意識、災害意識に対する関心も高い傾向にあります。
特徴③ ブランドより「共感」を重視する
高度成長期ではなく、長年続く不景気の中で生まれ育ったのがZ世代です。
そのため、ものを購入する際はブランド力の有無よりも、商品・サービスのコンセプトや開発されたストーリーへの共感性を重視する傾向にあります。
Z世代が企業選びで重視するポイント
では、上記のような特徴を持つZ世代は、就職先を選ぶ際にどんな点を重視するのでしょうか。
株式会社学情が2023年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に調査したアンケートによると、約8割の学生が企業の『ビジョン』や『パーパス』を重視しているという結果が出ています。
ビジョンとは「企業が実現したい未来」のことで、パーパスとは「企業が何のために存在しているのか」を指す言葉です。
「ビジョンに共感できる企業のほうが、モチベーション高く仕事ができる」
「パーパスが自分の価値観と一致していれば、ミスマッチを防げる」
…etc
「給料・報酬」や「ワークライフバランス」も大切ですが、企業の目指す方向性をしっかり確かめた上で就職したいという若者が多い傾向にあります。そのため、企業はどんな理念を持ち、どんな理想を描いているのかを明確にすることがZ世代に対する採用活動の第一歩といえるでしょう。
「ビジョン」「パーパス」が経営に重要とされる理由
ビジョンやパーパスを明確にすることは、Z世代の企業選びという観点だけでなく、経営そのものに影響を及ぼします。
とくに、職場が以下のような環境の場合は、会社と社員の距離が生まれやすいので注意が必要です。
①拠点が分かれている
②テレワーク社員が多い会社
③個人業務が多い
④職務上、社員間の競争が激しい会社
⑤代表や経営理念がよく変わる会社
⑥M&Aや事業承継をしたばかりの会社
拠点が離れていたり、テレワークが推進されている環境でも、「社員全員が同じパーパス理念を共有して業務に臨んでいる企業」「明確なビジョンに対して社員が能動的に動ける企業」は、結束力の強い集団になります。
『魅力的な企業』に必要な要素とは?
では、働くZ世代が感じる会社の魅力とと感じる企業にはどんな特徴はどのようなものがあるのでしょうか?例えば以下のようなものが挙げられます。
【魅力① 理念・方針】
・明確な理念
・長期ビジョン(経営計画)
・企業の成長性
・社会貢献(感)
【魅力② 人材・風土】
・風通しの良い風土
・若手が活躍している
・魅力的な経営陣、先輩が多い
・人材育成計画の充実
【魅力③ 活動・成長】
・事業優位性があり、事業領域が広い
・やりがいのある仕事
・魅力的な商品・サービス
・顧客との関係性
・DX推進
このブログを読んでいただいている経営者・管理職の皆様は、ぜひ以下の項目を確認しみてください。
① 自身の会社の魅力は何か?
② 会社の魅力をどうやって社員に伝えているか?
③ 自身の会社で不足していると感じる魅力は何か?
④ 不足する魅力を補うための取り組みを行なっているか?
これらの項目を考えることで「自社が今、何に取り組むべきか」その輪郭が見えてくるでしょう。
魅力的な企業に生まれ変わる秘策は『ビジョン経営』!
ここまでの話をまとめると、以下の通りです。
●Z世代は企業のビジョンやパーパスを重視している。そのため、自社の魅力をしっかりと伝えていくことが重要。
●ビジョンが浸透している企業は、社員とのミスマッチが生まれにくく、定着率も上がる。
そこでTOMAがZ世代の採用・定着率に悩む中小企業に推薦しているのが『ビジョン経営』です。
ビジョンとは企業が掲げる目標や、その達成のための道筋、将来像を文章にまとめたものを指します。
ビジョン経営とはビジョンを軸に企業経営を行うことです。
令和時代において、一線で活躍する企業の多くがビジョン経営を推進しています。
【ビジョンの事例】
味の素
アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う
食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します。
ソフトバンク
世界の人々から最も必要とされる企業グループ
会社のビジョンと個人のライフプランが一致すればするほど定着率が上がる傾向にありますが、ビジョンを明確にしていなければ、社員は「一致しているか」を考えることすらできません。『ビジョンがない』という会社は早急に作成に取り組むべきです。
ビジョン経営で注意すべきポイント
ビジョン経営を推進するにあたり留意すべきポイントがあります。
注意点① 作成して終わりでは効果が出ない
「我が社にはビジョンがあるから大丈夫」と単純に考えてはいけません。
意外と多いのがビジョンを掲げることで満足し、実行行動が伴っていないケースです。まずは経営層がビジョン実現を宣言し、それに向けて進む姿を社員に見せることで、初めて会社と社員の信頼関係を築くことができます。
注意点② 社員に主体性を持たせる
経営層が奮闘するだけでビジョンを達成することはできません。
本当の意味でビジョン経営を成功させるためには、ビジョンを飾って訴えるだけでなく社員一人ひとりが「考え」「行動」することが重要です。
ビジョン経営の浸透には各ターンとその状況における社員の思考の変化が複雑に絡み合っています。(下図参照)
自社のビジョン経営が今どのシーンにあるのかを把握し、適切な対策をとることが大切です。
注意点③ ビジョン実現に向けた行動と報告をくり返す
ビジョンを作成し、掲げたらプロジェクトチームを立ち上げ実行に移ります。
チームは幹部が主導し、ビジョン経営が弛まぬようにすることが大切です。
行動した実績は、集会や社内報やイントラサイトを通じて随時報告し、浸透を図ります。
ビジョン経営は一朝一夕で成就するものではありません。
継続した行動と報告の繰り返しが大切です。
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著者情報
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント
市丸 純子
2013年TOMAコンサルタンツグループ入社。現在はグループ内の長期ビジョン実現に向けた特別プロジェクトのマネージャーを務め、自社内の組織開発・人材開発に携わる。また、その経験を活かし、「100年企業を創る」をモットーに、多くの中小企業に向けて人材開発コンサルティングを提供している。