2025年12月24日

中堅企業が今こそ取り組むべき「人事部構築」─経営と現場をつなぐ人事部のつくり方

組織開発

社員数200名前後の中堅企業にとって、社員の増加に伴い直面するのが「人事機能の限界」です。総務部が人事を「ついで業務」として扱う体制では立ち行かなくなります。

「人事部を作りたいが、何から始めていいかわからない」
「経営戦略の重要な位置づけとしての人事部を実現したいが、人事のプロが社内にいない」

─そんな課題に直面している経営者・人事責任者に向けて、本記事では中小企業支援40年の経験を活かし、人事部づくりで多くの企業がつまずくポイントを整理した上で、4つの解決策をご提示します。

人事部を立ち上げて終わりではない、経営戦略に沿って「自走できる人事部」を構築するための考え方を解説します。

 

なぜ今、「人事部構築」が必要なのか

企業の成長フェーズにおいて、社員数200名前後はひとつの転換点。この規模になると、採用・評価・育成・労務管理といった「人に関する業務」が急激に増え、従来の総務部中心の体制では、次のような課題が顕在化します。

・社長や役員の目が全社員に届かなくなるため、経営者と人事担当、人事担当と各部門長、それぞれとの共通認識や連携を求められる

・有能な人材を採用するのが難しくなっており、企業の採用施策が複雑化・高度化している

・人材の流動化傾向が進んでおり、有能な社員の離職防止施策が重要となっている

・頻繁な法規制、リモートワーク・時短勤務といった「多様な働き方」への対応が追いつかない

・大企業を中心とした「人的資本経営」の考え方が成功事例として注目されており、社員の会社に対する期待が高まっているが、対応しきれない

つまり、「人事部」が存在しない(または名ばかり)体制では限界を迎え、人事部の構築や人事部のアップグレードが必要な段階に入っているのです。

 

 

 

人事部・人事担当が抱える4つの典型的な課題

TOMAがこれまで支援してきた中堅企業では、人事に関する課題は大きく次の4つに分類されます。

課題1 人事機能・マンパワーの不足

人事部が存在せず、総務部が採用・労務を兼務しており、日々の事務処理で手一杯なケース。これでは、「評価制度を整えたいが、時間が取れない」「面接が属人的で採用基準がバラバラ」など、仕組み構築まで手が回りません。

課題2 業務の属人化・体系化不足

前任者しか運用方法を知らないExcelの管理表、人事評価の“なんとなく運用”。業務が属人化しており、「仕組み化」されていないため、組織として知見が蓄積されず、担当者が変わる度に“ゼロからの立ち上げ”になってしまいます。

課題3 リソース・知見不足

専任人材が少なく、専門的なノウハウが社内にない状態。「とりあえずネットで調べてやってみたが、形にならない」といった声も多くあります。

課題4 経営との連携不足、各部門長との連携不足

経営戦略と人事施策が結びついていない。経営戦略と人事施策が分断され、経営層が「人事機能の重要性」を理解していないケースも多くあります。また、各部門長との連携不足により、現場(各部門)の実情に即した人事施策が立案されにくくなってしまいます。

このような課題を放置すると、採用・定着率の悪化、生産性低下、社員エンゲージメントの低下など企業の成長を止めるリスクにつながります。

 

課題別 解決へのアプローチ

企業の人事課題は、放置すれば成長の足かせになります。ここでは、4つの典型的な課題に対し、どのような取り組みが効果的か整理してみましょう。

解決策1 人事部機能の活性化

まずは、現状の業務を棚卸しして整理することから始めましょう。

総務部が兼務している場合は、どの業務が人事領域に該当するかを可視化し、基本的な業務フローを標準化するだけでも改善につながります。

さらに、将来の組織拡大を見据えて、人事部の組織構造やポジション定義、職務分掌の設計を意識すると、発展性のある体制が整います。

解決策2 業務の属人化を解消し、体系化

重要業務をマニュアル化し、手順書を整備しましょう。

また、複数人で業務を分担することで、特定の個人に業務が集中してしまうリスクを減らせます。

そのうえで、制度やプロセスの整備、フローの最適化を進めることにより、組織としてノウハウが蓄積され、属人化を防ぎ、仕組み化することができます。

解決策3 知見の充実化

社内研修やeラーニング、他社事例や書籍を活用して人事知識を補いましょう。

また、外部セミナーやネットワークでの情報交換を通じて、実務に直結する知見を得ることも有効です。

あわせて、経営戦略に沿った人事戦略や採用・評価・育成・組織開発のロードマップを整理しておくと、計画的なステップアップが可能になります。

解決策4 経営との連携強化

経営戦略や事業計画を定期的に確認し、人事施策の優先順位を整理することから始めましょう。重要な施策は、経営陣に提案する形で情報共有することが大切です。

また、経営戦略と人事施策の連動や、データ活用による意思決定の支援を意識しておくと、経営の重要機能としての人事体制を整えられます。

ここで紹介した取り組みは、自社でもすぐに始められる第一歩です。組織全体の最適化や人事制度の設計・運用となると、専門的な知見と外部の視点も重要です。

 

 

人事部設立は「人を軸にした経営」の第一歩

人事部を新たに立ち上げることは、単なる組織改編ではなく、「人を軸にした経営」を実現するための第一歩です。

TOMAでは、経営視点×人事実務×組織開発の多軸からアプローチする「人事部構築コンサルティングサービス」を提供しています。

単なる仕組み構築にとどまらず、“人事部が自走できる状態”をゴールとしている点が特長です。以下では、この考え方を踏まえ、人事部構築を進めるためのステップを順にご紹介します。

STEP1 人事部要件定義

組織構造の設計や人事ポジションの定義、職務分掌・業務フローの整理を行います。

たとえば、現状では総務部が兼務している業務を整理し、担当範囲を図示。これにより、「誰が何を担うのか」が社内で共通認識となり、業務の抜け漏れや属人化を防ぐことができます。

将来の組織像を見据えたポジション設計により、人事部の役割・責任・必要な権限が整理され、経営者と各部門長と一般社員の橋渡し役として機能する土台が整います。

STEP2 人事戦略策定

経営戦略と連動した人事戦略の策定や、採用・評価・育成・組織開発のロードマップ作成を支援。

・採用:現場(各部の管理職)の依頼に応じるだけの採用から、事業計画に基づき必要な人材像を定義した採用へ

・評価:部署ごとのばらつきや納得感のない評価から、会社の価値観に沿った評価制度へ

・育成:単発研修から、入社年次・役割に応じた“育成計画”が社内で共通言語になる「人材育成の仕組み」へ

これにより、判断基準や手続きの不明確さが解消され、人事部は、社員のスキルや配置状況、各部の課題、組織風土の傾向などの情報を経営に提供する役割を担えるようになります。

STEP3 運用・仕組み化のサポート

評価制度、採用プロセス、研修体系の整備に加え、属人化を防ぐマニュアルや業務フローの設計を行います。

・採用:人材要件(求める人物像や条件)や面接ガイドラインを作成し、採用力を強化

・評価:会社の価値観を反映した評価項目を現場(各部の管理職)で実際に運用できる形に落とし込み、評価制度を効果的に機能させる

・育成:役割・入社年次に応じた育成計画を設計し、社員が自身のキャリアステップを理解できる仕組みを構築

こうした整備により、人事施策の効果的な運用ができ、自走可能な体制の準備が整います。

STEP4 伴走型コンサルティング

実行支援や経営層・人事担当者へのコーチングを通じ、組織の成熟度に合わせた柔軟な支援を提供。

TOMAは、こうした組織改革が“一時的な施策”ではなく、“当たり前の日常”として根付くよう、制度の導入だけでなく人事部メンバーが使える設計・運用まで伴走します。

結果として、人事部は「人材の動き」や「組織の兆し」を経営に届け、経営は人材を「重要な資本」として捉える組織文化を醸成できます。

 

まずは「現状診断」から始めましょう

ここまで、人事部構築が求められる背景と、つまずきやすい課題、そして解決に向けたステップをご紹介してきました。

人事部は、制度を整えること自体が目的ではなく、経営と現場をつなぎ、組織を前に進めるための重要な機能です。

個別相談(60分・無料)でお話しすること

✓ 貴社の人事課題の優先順位を整理
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こちらからお気軽にお申し込みください

こんな方にお勧めです

□ 採用・定着率の課題を感じている
□ 人事評価制度を整備したいが、何から始めていいかわからない
□ 人事部を立ち上げたいが、社内に専門知識がない
□ 経営戦略と人事施策の連動を実現したい

また、専門家による無料セミナーも随時開催しています。

こちらからお気軽にご参加ください

 

著者情報

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役専務<br />
ビジネスサポート部 部長 税理士・行政書士

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役専務
ビジネスサポート部 部長 税理士・行政書士

陣内 正吾

人材開発・組織開発のみならず、事業承継や税務も含め多くの中堅・中小企業へのコンサルティングサービスを推進。TOMAのビジョン浸透のため2018年に10年後の自社の未来を考える全社プロジェクト「SHIFT TEAM」を発足させるなど、社内の組織改革を率いる。

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