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不動産を使った相続対策を行う前に…

記事作成日2020/04/13 最終更新日2020/04/13

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 平成29年5月に、税理士業界に波紋を広げる東京地裁の判決が出たのをご存じでしょうか? 内容は以下の通りです。

税務署が路線価を否定?

 それは、相続対策として被相続人の方が亡くなる3年ほど前に、マンション2棟を銀行融資による借入金と手元資金とを合わせて約14億円で購入することから始まります。
 その後、相続税の申告がなされるのですが、約14億円で購入した物件の相続税路線価等による評価額は約3.3億円で、これに銀行借入があるため、申告書上の相続税額はゼロとの内容であったようです。

 これに対し、国税当局は購入金額=時価と相続税評価額の間に4倍以上の大幅な乖離があり、「路線価による評価は、本件のような場合には適当ではない」との判断のもとに、不動産鑑定士による鑑定評価額を基に相続税の申告漏れとして、約3億円にも及ぶ追徴課税処分を行いました。

 これを不服とした相続人らはこの処分の取り消しを求めて提訴しましたが、東京地裁はその判決で「特別の事情がある場合には路線価以外の合理的な方法で評価することが許される」と指摘の上、「近い将来に発生することが予想される相続で、相続税の負担を減らしたり、免れさせたりする取引であることを期待して実行したもの」と認定しました。
 これがなぜ、税理士業界に波紋を呼んだかと言うと、「納税者が時価を把握することは容易でないため、相続税や贈与税の算定基準として利用しても法的に問題ないもの」と定めた土地の路線価に関して、制度を運用し、それを毎年発表している国税庁自らが路線価を否定しているためです。

 路線価は土地の時価≒公示地価の8割程度とされているため、現金で財産を持っているよりも不動産で保有した方が、評価が下がり相続税が安くなる傾向があります。このため、古くから相続対策として不動産取得が行われてきましたが、この判決だけを見ると、これらが否定されたことになります。

 今回は、路線価評価を認めているのと同じ通達の規定により、時価評価を命じている形になっています。これでは「どのような場合に、路線価ではなく時価評価としなければならないのか」など不明確です。本件については、行き過ぎた節税とみなされるような事情もあったようですが、不動産を使った相続対策に波紋を広げたことは確かです。

 いずれにしても同様の相続対策をお考えの方は、資産税に強く、不動産にも詳しい税理士によく相談の上、慎重に対策を実行することが必要です。

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