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取締役や代表取締役が辞任する場合、どのような手続きが必要か

記事作成日2018/09/25 最終更新日2021/04/14

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取締役は会社に対して辞任の意思表示をして、これが到達した場合に退任することになり、辞任登記をします。取締役と会社とは委任契約の関係ですので、任期の途中であっても取締役は、原則として辞任の意思表示をすることができます。辞任した取締役の辞任届を添付して登記申請を行います。

ただし、以下のように取締役が権利義務を有する場合には辞任登記ができないので注意が必要です。

1)権利義務取締役

取締役会非設置会社においては最低一人、取締役会設置会社においては3人以上の取締役が必要です。取締役の員数を欠くことで、会社の運営が停滞してしまうことになってしまうため、会社法では次のように規定されています。

任期満了や辞任によって取締役が退任するときに、その取締役が退任することにより法定の取締役数を満たさなくなってしまう場合は、後任者が就任するまで、取締役としての権利義務を有する(会346条1項)。

例えば、取締役の辞任により、法令又は定款で定めた取締役の員数を欠いてしまう場合、任期満了または辞任により退任した取締役は、なお取締役としての権利義務を有することになります。権利義務を有する取締役は、法令又は定款で定めた取締役の員数を満たす取締役が選任されるまで取締役の退任登記をすることができません。

法令又は定款で定めた取締役の員数を満たす取締役が選任されれば権利義務取締役の退任登記をすることができます。権利義務取締役の退任日は、法令又は定款で定めた取締役の員数を満たす取締役が選任された日ではなく、任期満了した日又は辞任した日となるので、注意が必要です。

権利義務という地位は、法律により与えられているものなので、権利義務取締役を解任又は辞任することはできません。

また、代表取締役も取締役と同様に任期満了、辞任により退任をした場合に、法令又は定款で定めた員数を欠く場合は権利義務を有することになります。

2)代表取締役の地位のみの辞任ができるか

株式会社の代表取締役は取締役の中から選定されます。取締役でない人が、代表取締役になることはできません。そして、株式会社は代表取締役を1名以上置かなければなりません。

代表取締役が辞任するパターンとしては、以下があげられます。

①取締役会設置会社の場合

代表取締役の地位のみの辞任が可能です。この場合、代表取締役の辞任届だけで足ります。

②取締役会非設置会社の場合

ⅰ 定款に「代表取締役は取締役の互選で選定する」とある場合

代表取締役の地位のみの辞任が可能です。
登記の添付書類は、辞任届と定款です。定款を添付するのは、互選規定があることを示すためです。

ⅱ 定款そのもので代表取締役の氏名が記載されている場合

取締役の地位と代表取締役の地位が一体化しているとされ、代表取締役の辞任の意思のみだけでは代表取締役の地位を辞することができません。株主総会の特別決議で定款を変更することで、代表取締役の地位を辞任することができます。

ⅲ 定款に「代表取締役は株主総会の決議で選定する」とある場合

代表取締役から意思表示のみでは代表取締役の地位のみの辞任はできません。この場合もⅱと同様に、取締役の地位と代表取締役の地位が一体となっているため、代表取締役の辞任の意思のみだけでは代表取締役の地位を辞めることができません。
株主総会で代表取締役の辞任について承認決議が必要となります。

ⅳ 取締役が各自代表の場合

代表取締役の地位のみを辞任することはできません。

取締役、代表取締役の辞任手続きは、任期管理をきちんとしなければ、登記懈怠をまねくおそれがあります。また、どのような場合にどのような手続きを経て辞任するのか、難しい問題ですので、専門家のアドバイスを受けると良いでしょう。

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