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会計不正の事例紹介 その3(四半期レビュー報告書の結論の不表明)

2018/07/17

タグ: 会計不正の事例紹介 TOMA監査法人

会社は、会計不正が発覚したため、社内調査委員会を立ち上げ調査報告書を公表しましたが、役員に係る追加調査が必要との声があることを踏まえ、第三者委員会の設置を決定し、追加調査を行うことを決定しています。四半期レビュー報告書日現在、第三者委員会の調査は終了しておらず結果が出されていないことから、監査法人は、調査の評価はできず、結果として不正の影響も確定できないと判断し、四半期レビュー報告書の結論を不表明としました。社内調査委員会の調査報告書が前提となりますが、今回はこの事例をとりあげます。不正の内容は、連結子会社で発生した架空取引の事例となります。

事例の紹介

・2018年3月14日に上場会社の連結子会社で発生した架空取引被害の現況を報告された事例
(社内調査委員会の調査報告書を受領したうえで調査状況報告は2018年4月13日に実施)
・架空取引の手口は、①発注書等の偽造、②売掛金の振込時のクライアントなりすまし、③監査法人がクライアントに直接送付する残高確認状を送付先から回収し回答等の偽装(偽造印を使用)を実施
・社内調査委員会の調査結果では、会社役員の関与(当該架空取引の認識があったかどうか)の可能性の検討に不十分な部分があると判断されたことから、第三者委員会の設置を決定。四半期レビュー報告書日現在、第三者委員会の調査は未終了で不正の影響を特定できないため、監査法人が出す四半期レビュー報告書の結論は不表明

内容

問題となった会社(以下、A社)は、当初直接クライアントとの間で映像製作取引を実施。運転資金の負担増加を理由に、クライアントからの一次受託先を連結子会社(以下、子会社)とし、子会社から95%の再委託料でA社が再委託する取引に変更された。A社は、クライアントへの営業活動・受発注業務・請求、その他付随する業務の委託を受ける形で、クライアントとの対応を継続。A社はクライアントとの間で架空取引(クライアント社印・担当者印を偽造したうえで、発注書・納品受取書を偽造し、子会社に送付)を実施

(発見の経緯)
・2017年12月末期日のクライアントからの入金に不足が発生。クライアントへの入金督促の実施やA社に状況確認していたところ、A社の代理人弁護士から各種不正行為を行っていた旨の説明あり
・会社は社内調査委員会を設置し、外部専門家のアドバイスを受けながら調査を実施

(不正・架空取引の手口)
・会社は、A社の代表取締役及び取締役を主犯とする詐欺事件と認識し、今後訴追を検討
・次のような不正を行い、不正の発覚を回避していたことが判明(2007年度の取引から架空取引が含まれ、2011年度以降はすべての取引が架空取引)
(1)発注書等の偽造。クライアントからの受注に関する書類等の授受をA社で行うことから、クライアント社印・担当者印を偽造したうえで、A社で発注書・納品受取書を偽造
(2)クライアントからの売掛金は、A社が自社の口座から現金を引き出し、銀行振込の振込名義人欄にクライアント名を記載、連結子会社に送金。クライアントからの振込に仮装し、入金遅延なし
(3)監査法人からクライアントに直接送付される残高確認状について、A社は各クライアントの担当者から未開封の状態で入手。A社は、偽造したクライアント社印・担当者印を使用して、必要事項を記載し、直接監査法人に返却(クライアントになりすまし残高確認状の回答を実施)

(疑問点)
・架空取引は、2007年度から実施され、2011年度以降はすべて(579件)架空取引。社内調査報告書上、架空取引は652件で120億円程という数値が報告されている。この状況で、どのような映像制作が行われていたか、映像取引の実態確認を本当に確認していなかったのかは疑問
・社内調査委員会の結果報告では、内部関与者がいたことは確認されていないとなっているが、連結子会社の業務フローや監査法人関係の対応を考慮していると、内部関与者なしに対応できたかは疑問(社内調査委員会の調査報告では内部関与はなしと判断され、第三者委員会設置の一理由)

事例から学ぶこと

・偽造印鑑が使用され取引に必要な全書類を偽造、クライアント名義による遅延のない売掛金の入金、また、監査法人からクライアントへ直接送付される残高確認状の回答の偽造。この状況での確認は困難であったと考えられる。7、8年を超える長期間の不正で、不正発覚のきっかけは事務ミスであったと考えられることから、相手が想定しないような手続を実施する等、監査手続を柔軟に見直して、普段確認していない手続を行うことも必要であったと考えられること
・実際に納品された物を確認することが、必要であったと考えられる。必要な書類の確認、押印確認や入金確認は一番で確認されるが、現物確認も同じくらい重要であったことを示す事例であったと考えられる。2011年度以降はすべて架空取引であり、制作された映像の現物確認を行っていれば、不正に気付くことができた可能性は高いと考えられること

最後に

証憑類が完全に偽装されてしまうと、不正に気づくのは困難と考えられます。監査法人がクライアントへ直接送付した残高確認状を、当該クライアントから回収して偽造するという不正行為が依然として行われていることに驚きました。監査法人の直接送付を無にされないようクライアントには監査法人以外の人から、回収を言われても無視してくださいとお願いするしかないのかもしれません。もし、同一人の偽造であれば、記載された数字等がヒントになったかもしれません。今一度、監査法人が直接投函して直接回収することの意味を理解して、対応することが必要と考えられます。それから、売上計上される現物の実態を定期的に確認することが重要と気づかせられる事例であったと考えられます。2011年度以降はすべて架空取引であったことを考えても、会社が実態確認しているだろうではなく、監査人も積極的に確認するよう注意することが必要と考えられます。

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