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事業承継で役員退職金を活用するには

記事作成日2017/09/19 最終更新日2023/05/15

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29 事業承継で役員退職金を活用するには

高額な役員退職金(役員退職慰労金)の支給は、事業承継の際の自社株対策としてポピュラーな方法です。適正な役員退職金は「特別損失」として計上されますので、所得を大幅に下げる効果が期待できます。

これにより一時的に株価が下がりますので、後継者への株式の移動もやりやすくなります。事業継承においては「上手に役員退職金を活用することがカギとなる」と言えるでしょう。

役員退職金が役立つワケとは

事業承継のタイミングで「後継者へ株式一括贈与」などを考える経営者もいることでしょう。しかし、そのままの株価では贈与が容易ではなく、おまけに贈与税の問題に悩まされるかと思います。

そのような場合に活用できるのが、「役員退職金」です。適正な範囲内と判断される役員退職金であれば、「特別損失」として計上され、株式の評価額が下がります。一時的にその事業年度の株価を下げることができるため、仮に相続の発生した場合も税負担が軽減できますし、退任する側は資金が増やせて、まさに一石二鳥の方法と言えるでしょう。

役員退職金の算定方法

役員退職金の算定では、通常「功績倍率方式」が用いられます。功績倍率方式では「最終役員月額報酬×役員就任年数×功績倍率」の数式に当てはめて、役員退職金が算定されます。

例えば「最終役員月額報酬:100万円」「役員就任年数:40年」「功績倍率:3.0」とした場合、支給される役員退職金の額は1億2千万円となります。功績倍率については代表取締役で「2.0~3.0」が一般的と言われていますが、各法人の状況に応じて変化します。この点は、税理士にアドバイスを求めつつ適切な値を決定するのが良いでしょう。

役員退職金の税負担は心配ないか

役員退職金の税負担については、役員退職金を「生前に受け取るケース」と「死亡時に受け取るケース」の二通りがあります。いずれも賞与や給与よりも優遇された点を持ちますが、税の負担額はそれぞれに異なりますので、きちんと確認しておきましょう。

まず、役員退職金を「生前に受け取るケース」では、退職金に所得税がかかるため、「(退職金-退職所得控除)×1/2」で課税所得に対する税額を算出します。退職金が多額だと課税額が心配になりますが、在任期間に応じて退職所得控除も多くなる仕組みとなっています。

ただし、退職金を生前にもらうと、その分、相続財産を増やすので、相続税の負担を増やす要因となるため、生前に受け取るべきかどうかについては慎重に検討する必要があるでしょう。

次に、役員退職金を「死亡時に受け取るケース」ですが、これは死亡退職金、あるいは弔慰金の扱いとなります。死亡退職金には、所得税ではなく相続税がかかります。「500万円×法定相続人の数」が非課税枠となりますが、これは相続税の基礎控除額とはさらに別となります。

弔慰金は、業務上の死亡の場合は「普通給与の3年分」、業務上以外の死亡では「死亡時の普通給与の6ヶ月分」が、非課税の相続財産となります。なお、弔慰金を損金として処理する場合には、死亡退職金と明確に区別する必要があります。

役員退職金に生命保険は活用できるか

役員退職金に生命保険を活用すると「決算期の税引前利益額のコントロールがしやすい」というメリットがあります。これにより株価を下げつつ、なるべく高額な退職金を取る、ということが可能になります。ただし、生命保険の解約返戻率など、商品の内容はきちんと確認して選ぶ必要があるでしょう。

事業承継において、役員退職金は大きく活用できます。役員退職金の税負担については、相続までも見越して「生前にもらうか」「死亡時にもらうか」を考える必要があります。また、役員退職金に生命保険を活用することにも大きなメリットが期待できるでしょう。

監修 TOMAコンサルタンツグループ コーポレートアドバイザリー部

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