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中小企業のためのグループ経営戦略 ~グループ経営における組織の仕組み

記事作成日2018/04/10 最終更新日2018/05/21

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前回までは、持株会社(ホールディングカンパニー)を活かしたグループ経営のメリット・デメリットについての内容でした。
今回は「なぜグループ経営をする必要があるのか」について考えていきたいと思います。

1.問題

企業は事業の多角化や事業拠点の拡大をしていくことで更なる成長を目指していくことがあります。事業規模が拡大していくと、本社で行っていた会社の管理負担が増大します。新規事業の参入や事業拠点の拡大、海外進出には、日々の業務においても専門的な知識や経験が必要になり、現状の管理体制では適切な対応がとれなくなるという問題が生じます。
この問題は、量的な問題と質的な問題に分けることができます。
量的な問題は、各事業の情報量が増大することで、会社の管理を行っていた本社が各事業の情報を把握することや、それぞれに合わせた経営戦略の策定・実行が困難になるといった問題です。
質的な問題は、所属地域や事業分野が増えることで、組織文化や商習慣の違いや事業の特性・特色の違いなど専門性の高い知識が必要になり、経営側の判断や情報が複雑になっていくという問題です。
これらによる弊害は、(1)意思決定に必要となる情報収集・分析の遅延、(2)事業・地域特性を把握しきれず、誤った意思決定を行ってしまう恐れがある、(3)業務増大による、本社機能の低下などがあります。

2.検討

これらの弊害を解決するためには、グループ経営を導入する必要があります。
グループ経営を行うために、本社は各事業部門に経営責任と権限を委譲し、事業ごとの統括はそれぞれの事業部門に任せるようにします。
本社での機能は、グループ全体の経営理念やビジョン、事業ポートフォリオ管理・資源配分、事業間のシナジーの創出を担うグループ戦略機能、各事業部門の進捗管理や業績評価を担うグループコントロール機能、対外的な顔として、広報や社会的な責任を担うコンプライアンス機能です。本社は各事業部門をサポートし、グループ全体の事業力を強化していくことができます。
グループ経営の導入により、本社からの権限の委譲とサポート体制ができることで、各事業部門は迅速かつ適切な意思決定ができるようになり、弊害であった(1)~(3)が解決されます。

3.まとめ

企業を存続させるためにも、企業価値を向上させることは会社の使命です。会社の規模が拡大するにつれ、それに合わせた組織構造をつくっていかなければなりません。中核事業を有していた本社が、その事業を切り離し、事業部門ごとにその事業運営を任せ、本社はグループ全体を統括することがグループ経営の本質であるといえます。

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