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中小企業のためのグループ経営戦略 ~複数の事業を擁する経営者が抱える問題とその対応方法3~

記事作成日2017/12/01 最終更新日2018/01/05

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問題

前回、多角的経営を行う経営者の共通の悩みのひとつとして、役員会での意思決定の遅さという問題について、見てみました。
今回は「従業員の不満への対応」について考えていきます。
多角的経営を行っている会社では従業員が不満を抱えモチベーションが低くなってしまうことがあります。
この原因を解明するために、まずは多角的経営を行っている会社の給与体系及び人事評価制度について説明します。多角的経営を行っている会社では、一つの会社であるがゆえに従業員への給与が全社一律の体系を取っていることが多いです。毎月の給与については、年齢や勤続年数が上がれば技術が身につき会社の戦力になってくれるという想定のもと全社一律の給与テーブルに則って支給し、賞与についても営業成績よりも年齢や勤続年数に重きを置いて支給し、どの事業部門にいても同じぐらいの年齢や勤続年数なら、どの従業員も同水準の給与となっています。人事評価制度についても、一つの会社であるがゆえに全社一律の制度を取っていることが多く、結局年功序列での昇進となってしまいます。
これらのことから、業績が良い部門の従業員は、会社に利益をもたらしているのにも関わらず給与が上がらず、なかなか昇進をしないことに不満を持っており、業績が悪い部門の従業員は、自分たちががんばらなくても給与は減らされないし、勤続していれば昇進はしていくと考え、モチベーションが低くなってしまいます。
従業員のモチベーションを上げるためには、やりがいや成長できる環境など色々な手段がありますが、その中でも給与と昇進は特に重要です。なぜなら給与と昇進は、従業員が今まで努力をしてきたことに報いるための手段であるからです。そして、給与は高ければ、昇進は早ければ良いわけではなく、従業員ごとに適正・公正に評価されなければモチベーションは上がりません。

検討

この問題を解決するためには、各事業部門に合った給与体系や人事評価制度が必要になります。そのため、事業部門を子会社化する持株会社制度(ホールディングカンパニー制度)の導入を検討します。

メリット

事業部門ごとに子会社化することにより個々の事業部門ごとに給与体系や人事評価制度を採用でき、また第1回目のブログで述べたとおり、各事業部門の財務状況が明確になるため、その業績を反映した給与体系や人事評価制度を採用することができるようになります。これにより各従業員が自部門の業績で給与や昇進を評価されると意識するようになり、仕事へのモチベーションが上がります。

デメリット

業績を反映させる給与体系や人事評価制度になっているため、例えば一般的に利益が出やすい傾向がある成熟商品を扱っている事業部門と一般的に利益が出にくい傾向がある新商品を扱っている事業部門のように、業績は悪いがグループ全体で必要不可欠な事業部門の従業員のモチベーションが下がりやすくなります。
しかし、このデメリットは、事業部門間での給与体系や人事評価制度にある程度のハンデをつけることで解決できます。もちろんこの事業部門間のハンデについては、適正につけなければなりません。

問題の解決

事業部制を採用していたときは、従業員は努力をしても報われにくいため、従業員の仕事へのモチベーションが低い状態でしたが、持株会社制度(ホールディングカンパニー制度)を導入し各事業部門の業績を反映させた給与体系及び人事評価制度を採用することにより、従業員の仕事へのモチベーションを上げ不満を解消することができます。
その結果、社員一人ひとりが会社のために貢献するようになり、各事業部門でもグループ全体でも利益を上げやすい企業体質を手に入れることができます。

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