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非上場株式の納税猶予

記事作成日2017/07/21 最終更新日2018/09/18

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6/29のブログ「事業承継で贈与税が払えない場合の対策」でふれました納税猶予の活用について今回は詳細を説明したいと思います。

1.納税猶予とは

非上場株式の納税猶予は、中小企業の事業承継が円滑に進むために設けられた税制上の特例です。相続税の納税猶予と贈与税の納税猶予の2つがあります。

贈与税の納税猶予では、現経営者からの贈与により、後継者が取得した自社株式に対応する贈与税の納税が猶予されます。(ただし、納税猶予の対象となる株式は、後継者が相続あるいは贈与前から既に保有していた分も含めて、発行済議決権株式総数の3分の2までの部分となります。)

いずれにせよ、事業承継で後継者に会社の株式を移す際の税金の納付が猶予されますので、納税資金に苦慮する必要がなくなります。

2.平成29年度の税制改正の影響

平成29年度の税制改正では、納税猶予に関する部分も大幅に改正となりました。納税猶予を適用する際の要件が緩和され、今まではできなかった相続時精算課税制度との併用が可能となりました。納税猶予制度を適用する際の最大の障害は、適用要件の厳しさと、適用後に要件を満たさなくなった際の猶予税額の課税でした。

最も厳しいと考えられていた適用要件に雇用の8割維持があります。雇用の8割を計算する際の端数は、従前は切り上げでしたので、従業員が4名以下の会社の場合、1人辞めるだけで要件が満たされなくなっていました。改正では端数を切り捨てることとなったため、従業員4名以下の会社で1名辞める場合でも問題がなくなりました。

また、相続時精算課税制度との併用は、たとえ要件を満たさなくなり、猶予されていた贈与税額を納付しなければならなくなっても、相続税額を超えるような高い税率での課税が避けられます。

3.納税猶予の出口は

納税猶予を使った事業承継対策では、一般的に贈与税の納税猶予を入り口とします。後継者に経営権と株式を譲り、先代は引退します。この際、贈与税の納税猶予を使うことで、一定の贈与税の納税が猶予されます。先代経営者が亡くなったとき、猶予されていた贈与税額は免除になりますが、今度は相続税を納税する必要がありますので、相続税の納税猶予を適用します。

また、先代から会社を承継した後継者が次の代に事業を承継する際に株式を贈与すれば、猶予されていた相続税が免除になりますので、また贈与税の納税猶予を適用します。

このように、納税猶予を繰り返すことで、要件を満たす限りにおいて課税は繰り延べられます。

しかし、納税猶予を続けるには、都道府県や税務署への報告が義務付けられますので、納税が可能となった際には、税金を納めて納税猶予を終えることが良いでしょう。これが納税猶予の出口です。

4.事業承継計画

円滑な事業承継には入念な計画が欠かせません。今回紹介した納税猶予についても、事前の準備と計画に基づいて行うことが必要です。突然の予期せぬ相続などで事業承継が起こってしまうと、後継者の負担は計り知れません。

100年企業づくりの第一歩として、事業承継計画を早めに立案、準備しておきましょう。

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