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残業に係る給与の取扱い

記事作成日2017/09/08 最終更新日2017/09/08

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現在、日本では「働き方改革」という言葉を耳にする機会が増えています。「働き方改革」とは、一億総活躍社会実現に向け、労働制度の抜本改革を行い、労働者一人ひとりに対して、多様な働き方を可能とすることです。

「働き方改革」で特に問題となっているのが長時間労働の是正であり、今後、長時間労働の取り締まりがさらに強化されると見込まれています。今回は長時間労働(残業)に係る給与の取扱いを説明したいと思います。

未払いの残業代の一括支給を行った場合

厚生労働省の労働基準関係法令違反に係る公表事案の中で残業代が未払いとなっている企業が公表されています。この未払いの残業代を従業員に一括で支給した場合、支給した企業側と支払われた従業員側でそれぞれ次のような取扱いとなっています。

未払いの残業代を従業員に一括して支給した企業側では、法人税法上、支払った日の属する事業年度の費用として損金の額に算入されます。

一方、支払われた従業員側では、所得税法上、支給日が定められている給与等についてはその支給日の属する年分の給与所得となり、その支給日が定められていないものについてはその支給を受けた日の属する年分の給与所得となります。

支給日が定められている未払いの残業代の場合、過年度分は過年度の給与所得として、本来支給すべきであった支給日の属するそれぞれの年分の給与所得となります。この場合には、過年度の年末調整のやり直し、過年度の給与所得を修正し納付不足額を納付する必要があります。

支給日が定められていない未払いの残業代の場合、全額が当年度の給与所得となります。この場合には、過年度の所得税、住民税を修正する必要はありませんが、支給を受けた年分の所得税及び翌年度の住民税の納付額が増額する可能性があります。

深夜に帰宅する従業員に支給するタクシー代

深夜に帰宅する従業員に支給するタクシー代は、所得税法上、通勤費に該当し非課税所得として取り扱われます。合理的な経路等で計算した運賃の額が一定額を超える場合は、その超える部分の金額は給与として課税されます。

残業者に支給する夜食代

残業者に支給する夜食代(社会通念上認められる金額)は、支給する企業側と支給される従業員側でそれぞれ次のような取扱いとなっています。

支給する企業側では、法人税法上、従業員全員を対象としている場合は福利厚生費となり、特定の従業員を対象としている場合には、その従業員に対する給与として、どちらも損金の額に算入されます。

一方、支給される従業員側では、残業した者(その者の通常の勤務時間外に勤務を行った者に限る。)に対し、支給する食事については、課税しなくても差し支えないとされています。これは、時間外勤務に対する弁償的な性質を有していると考えられており、回数に関わらず課税されません。

なお、夜勤を本来の職務とする者について支給する夜食代に関しては、給与として課税されます。

まとめ

今回は「働き方改革」で注目されている長時間労働(残業)に関する税務上の事例の一部を紹介しました。残業に係る給与の取扱いでも様々なパターンが想定され、いかに本質を見抜きどのような取扱いになるかを判断する必要があります。普段の何気ない日常の中で税務上の観点から見てみると違った気づきがあると思います。

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