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出向に伴う給与負担金の取扱い

記事作成日2017/09/29 最終更新日2021/07/28

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出向の意義及び現状

出向とは、一般的に「命令により、自社の使用人の身分上の地位・雇用関係を継続(具体的には休職)したまま、相当期間にわたって他の企業(主に子会社・関連会社等)に派遣し、その企業の指揮命令の下に業務に従事されることをいう。」と言われています。

出向は資本関係がある法人間や取引関係のある法人間で雇用調整、経営指導・業務指導、人事交流などの幅広い目的で行われています。近年では企業規模に関わらず、出向を活用する企業が増えており、出向者への給与(以下「給与負担金」という。)に関わる税務上の取扱いについて関心が高まっています。

今回は出向に伴う給与負担金の税務上の取扱いについて説明します。

出向に伴う給与の税務上の取扱い

出向者に対する給与は労務の提供による対価となるので、その労務の提供を受ける出向先法人が負担するのが原則です。この場合に出向先法人が自己の負担すべき給与に相当する金額を出向元法人の給与負担金として支出したときは、出向先法人のその出向者に対する給与として取り扱われます。

また、その給与負担金が経営指導料等の名目で支出された場合についても同様の取扱いとなります。給与負担金の取扱いは、出向者が出向先法人の使用人となっているか、役員となっているかによって異なります。

出向者が出向先法人の使用人である場合に支給した給与負担金については、原則として、出向先法人におけるその使用人に対する給与として損金の額に算入されます。

一方、出向者が出向先法人の役員である場合に支給した給与負担金で下記の(1)及び(2)のいずれにも該当するときは、出向先法人がその役員に対する給与の支給として役員給与の損金不算入(法人税法第34条)の規定が適用されます。

(1)その役員に係る給与負担金につき、その役員に対する給与として出向先法人の株主総会、社員総会又はこれらに準ずるもの(以下「株主総会等」という。)の決議がされていること。
(2)出向契約等においてその出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること。

したがって、出向先法人は、出向者が役員の場合、役員給与の損金不算入の規定の適用があることを注意する必要があります。

出向元法人が出向者の給与を支払っている場合において、出向先法人から出向元法人に対して給与負担金の支払いがないときは、原則として、出向元法人が負担する給与の額について、出向元法人から出向先法人に対する寄附金として取り扱われます。

出向元法人と出向先法人との間に給与水準の較差がある場合の税務上の取扱い

出向元法人と出向先法人の給与水準に較差がなく、出向先法人が出向元法人の給与水準と同額を支給する場合には、上記の取扱いとなります。実務上においては、出向元法人と出向先法人の給与水準は較差がある場合がほとんどであり、その較差が問題となります。

出向元法人が出向先法人との給与水準の較差を補てんするために出向者に対して支給した給与は、出向期間中であっても、出向者と出向元法人との雇用契約が依然として維持されていることから、寄附金にはならずに出向元法人の損金の額に算入されます。この場合に、出向元法人が負担した差額が較差補てんに該当しないときは、寄附金として取り扱われます。

まとめ

今回は実務上でもよく見る出向に関わる給与負担金の取扱いについて説明しました。支給方法によっては、役員給与の損金不算入の規定の適用や寄附金となる場合があるので注意が必要となります。出向者がいらっしゃる場合には、これを機会に今一度ご確認をして頂けますと幸いです。

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