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損害賠償金の税務上の取扱い

記事作成日2018/04/20 最終更新日2021/07/28

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新聞やテレビなどで、企業が損害賠償を求めて提訴したとか、損害賠償金を支払ったといったニュースをよく耳にすることもあるかと思います。今回はそんな損害賠償金を支払った場合の税務上の取扱いや損金の額に算入する時期について説明したいと思います。

損害賠償金の法人税上の取扱い

自社の役員や従業員が行った行為で他人に損害を与えてしまい、法人がその損害賠償金を支払った場合には、税務上取扱いが明らかにされています。今回はこの取扱いについて説明したいと思います。その取扱いは、役員や従業員の行為の態様によって次のように分けられています。

1. 業務上の行為で故意や重過失があると認められない場合

役員や従業員が他人に損害を与えた行為が故意や重過失ではなく、業務上生じた場合には、その損害賠償金は給与以外の費用として損金の額に算入されることになります。

例えば、製品を出荷したが、従業員のチェックがもれてしまって製品が壊れてしまい、お客様に損害を与えてしまった場合などが該当します。

2. 業務上の行為で故意や重過失があると認められる場合

こちらが1の場合と異なるのは、業務上のものであるけれども、役員や従業員が故意によるものや重過失によって損害を与えた場合であるというところです。

この場合には、法人が支出した金額は、損金の額に算入されるのではなく、役員や従業員に対する貸付金等として処理されることになります。これは、故意によるもの等であることから、役員や従業員個人の責任において、損害賠償金を負担すべきものであると考えられるためです。

そのため、法人が従業員等の負担すべき金額を支払ったとしても、従業員等にその金額を請求する権利があるため、貸付金等の資産として計上することになります。

なお、その貸付金等を役員や従業員の支払能力がないことから求償できないと認められる場合には、その全額又は一部を貸倒れとして損金の額に算入することができます。ただし、貸倒れとして処理した金額のうちに、回収が確実であると認められる部分がある場合には、その役員や従業員に対する給与として取扱われることになります。

例えば、従業員が自社に対してわざと損害を与えようとして、販売する製品に傷を付けて販売し、お客様に損害を与えてしまった場合などが該当します。

3. 業務に関連しないものである場合

そもそも業務に関連しないようなものである場合には、2の処理と同様に役員や従業員に対する貸付金等として処理されます。なお、こちらも2の場合と同様に貸倒れとして処理した場合には、損金の額に算入されることになります。

例えば、役員が休日等に交通事故を起こしてしまい、その損害賠償金を会社が負担した場合などが該当します。

損害賠償金の損金の算入時期

上記1の業務上の行為で故意によるもの等でない場合の損害賠償金については、原則、その支払うべき額が確定した日において損金の額に計上されます。そのため、損害賠償に関する協議が継続中である場合には、損金の額に計上することができないことになります。

しかし、事業年度終了の日までに賠償すべき金額が確定していないときでも、相手方に損害賠償金として具体的に金額を提示している場合には、少なくともその金額については、当事者間に争いがないため、未払金に計上することで損金の額に算入することができます。なお、上記2や3の場合には、法人が損害賠償金を支払った日に、貸付金等の資産に計上されることになります。

損害賠償金の消費税上の取扱い

法人が損害の発生に伴って損害賠償金を支出した場合には、通常資産の譲渡等の対価とされないため、消費税は課税対象とはなりません。なお、損害賠償金を受け取った側でも、課税売上とはならず消費税は対象外とされます。これは、損害賠償金はあくまでも損害を補填しているだけであり、資産の譲渡等の対価とはならないためです。

ただし、実質的に資産の譲渡等の対価に当たるものについては、課税の対象となります。例えば、事務所を賃貸しており、その明け渡しが遅れたため賃貸人が収受する損害賠償金については、実質的にその損害賠償金は事務所を賃貸していたこと(資産の貸付)により収受する対価とされるため、課税の対象となります。

まとめ

今回は損害賠償金の税務上の取扱いについて説明しましたが、誤りが多い事例としては、本来役員等が負担すべき金額を法人が支出して、費用として処理してしまっているというものになります。その役員等から回収ができると認められる場合には給与として源泉徴収等が必要になってくるため、注意が必要になります。

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