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為替換算調整勘定 (Foreign Currency Translation Reserve)とは?【TOMAシンガポール支店 公認会計士駐在の会計・税務事務所】

記事作成日2015/09/16 最終更新日2021/05/21

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【はじめに】

今回は過去の質問をいただいた内容から、連結決算書に登場することがある為替換算調整勘定(Foreign Currency Translation Reserve)についてご説明します。

たとえば、日本法人では非上場会社のため連結決算書を作成していないものの、シンガポール法人ではマレーシアに子会社があるために連結決算書を作成しているような場合、この勘定科目が登場します。

連結決算書を見られていない方からご質問をよくいただきますし、「日本法人で連結決算書を作成しているが、為替換算調整勘定ってよくわからない」という方は、是非一読してください。

【前提】

連結決算書を作成するには、親会社と子会社の決算書を合算する作業が必要です。親会社も子会社も同じ通貨で決算書を作成していればよいのですが、親会社がシンガポールドル、子会社がマレーシアリンギットで決算書を作成している場合は、単純に合算することはできません。

通常、連結決算書は親会社の通貨で作成することが多いため、子会社の決算書をマレーシアリンギットからシンガポールドルに換算することとなります。

為替換算調整勘定が登場する前提としては

・連結決算書を作成する
・海外子会社があり、親会社と異なる通貨で決算書が作成されている

ことが前提となります。

【為替換算調整勘定の発生プロセスと為替差損益との違い】

マレーシアリンギットで作成されている子会社の決算書をシンガポールドルに換算替えすると、換算差額が生じます。この換算差額はあくまでも実際の取引から生じたものではなく連結決算書を作成する過程で生じるに過ぎないため、個別決算書でも登場する実際の商取引から生じる為替差損益とは異なる扱いをすることとなります。

このため、為替差損益は損益計算書(包括利益計算書)に表示され、企業の経営成績を示す当期純利益に反映される一方、為替換算調整勘定は、親会社の法人が子会社の法人の株式を処分しない限り、貸借対照表及び包括利益計算書に表示され、企業の経営成績をしめす当期純利益には影響させないが、連結純資産の増減には影響させる科目として扱われます。

【為替換算調整勘定の影響】

為替換算調整勘定は為替相場の変動により金額が増減する勘定です。親会社の通貨が強くなってきている場合、為替換算調整勘定が連結純資産を減少させる方向で変動します。このため、特に海外子会社の純資産割合が大きい場合は、連結純資産比率を大きく減少させる要因となります。

逆に現在の日本のように円安が進行している国の法人が親会社である場合、為替換算調整勘定が連結純資産を増加せる方向で変動します。

為替相場の変動幅が大きい場合は、連結決算書に与える影響が大きくなりますので、連結決算書の説明をされる場合は、為替換算調整勘定の性格を知っておく必要があります。

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