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ヤフー事件で争点となった「特定役員引継要件」

記事作成日2016/04/19 最終更新日2016/04/25

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ヤフー事件が平成28年2月29日、国側勝訴で終局を迎えました。

ヤフー事件とは、ヤフーがソフトバンクの子会社であったS社を買収し、買収後わずか1ヶ月で合併、S社が抱えていた約540億円の繰越欠損金を自社の利益と相殺し法人税の申告を行ったことに国が、その行為等が法人税の負担を不当に減少させる結果になるとして争われていた事件です。

ヤフー事件では、みなし共同事業要件の1つである「特定役員引継要件」が争点となりました。

一定の要件を満たした合併が行われた場合、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引継ぐことができます。ただし、支配関係がある企業グループでの合併の場合は、支配関係が生じてから5年を経過しない合併のときは、みなし共同事業要件を満たさないと繰越欠損金の引継が制限されます。

みなし共同事業要件とは次の5つの要件です。また、みなし共同事業要件を満たすとは、次の1から4までの要件に該当する又は1と5に該当する場合をいいます。

事業関連性要件
事業規模要件
被合併事業規模継続要件
合併事業規模継続要件
特定役員引継要件

「特定役員引継要件」とは、合併前の合併法人と被合併法人の特定役員であった一定の者が、合併後の合併法人でも特定役員となることが見込まれていることをいいます。

(特定役員とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいいます。)

ヤフー事件では、「特定役員引継要件」を形式的には満たしているが、実質は事業上の必要性は認められず、経済的行為としていかにも不自然・不合理なものと判断されました。

その結果、約540億円の繰越欠損金の引継ぎが否認されました。

今後、組織再編の検討を行うにあたっては規定の形式的な要件を満たしているだけではなく、組織再編税制の趣旨・目的に反しないかも重要な検討要件となります。

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